Up 現行の関数指導の旧さ  


    現行の「関数」の定義は古典的なものであって,以下のような教授/学習上の問題がある:

    1. 「関数とは何か?」の問いに簡明に答えることばがない。
      ──これは,「関数」が意味不明であるということ。

        「従属変数 y」が「関数」と呼ばれている:
        「変数xの値を決めるとそれにつれて変数yの値も決まるとき,
         yをxの関数という」
        (註)

    2. 「変数とは何か?」の問いに簡明に答えることばがない。
      ──これは,「変数」が意味不明であるということ。

        「関数」「変数」が意味不明であるとは,「わかる」べきものがゴールになっていないということ。
        したがって,ここには「わからせる」が存在しない。 ──「わかりにくい/わからせにくい」のではなく,「わかる/わからせる」がそもそも無い。
        教科書準拠では,指導のしようがない。

    3. 現行の「関数」では,「ともなって変わる」が主調になっている。
      これは,歴史的に,関数の概念が「変わり方の対応」の主題化という文脈で発生したことによる。

        現代数学の「関数」の概念は,意味を「変わる」から「対応」の方にシフトしている。
        例: 学生番号と名前の対応は,「関数」の解釈が立つ。 この対応では,「ともなって変わる」という (古典的な関数の) 問題意識は生じない。

    4. 「関数」のイメージが「数値の式」になっている (このイメージは不適切)。

        「式」「数値」を「関数」のイメージにすると,ごく一部の関数が「関数」になるのみ。
        また,式に表現することが高級(いいこと)であるわけでもない。

    5. 「定義域・値域」の取り上げ方が弱い。 したがって,「定義域・値域」に対する生徒の意識が,希薄になりやすい。
       (定義域・値域は付随的なものではない。関数の要素概念である。)

        学生番号と名前の対応表のような現実的な (卑近な) 表を関数の例にすれば,定義域・値域の押さえが重要であることが自ずとわかる。 しかし,現行の関数は数値の式であるために,定義域・値域の押さえに重要性・必然性が見えてこない。

    総じて,現行の指導法では,関数が対象概念 (モノ) になっていない
    これが,関数が意味不明のものになる最も大きな理由。
    そして,授業では「意味不明」が最悪


     註 : 教科書の例