現行の「関数」の定義は古典的なものであって,以下のような教授/学習上の問題がある:
- 「関数とは何か?」の問いに簡明に答えることばがない。
──これは,「関数」が意味不明であるということ。
「従属変数 y」が「関数」と呼ばれている:
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「変数xの値を決めるとそれにつれて変数yの値も決まるとき,
yをxの関数という」(註)
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- 「変数とは何か?」の問いに簡明に答えることばがない。
──これは,「変数」が意味不明であるということ。
「関数」「変数」が意味不明であるとは,「わかる」べきものがゴールになっていないということ。
したがって,ここには「わからせる」が存在しない。
──「わかりにくい/わからせにくい」のではなく,「わかる/わからせる」がそもそも無い。
教科書準拠では,指導のしようがない。
- 現行の「関数」では,「ともなって変わる」が主調になっている。
これは,歴史的に,関数の概念が「変わり方の対応」の主題化という文脈で発生したことによる。
現代数学の「関数」の概念は,意味を「変わる」から「対応」の方にシフトしている。
例: |
学生番号と名前の対応は,「関数」の解釈が立つ。
この対応では,「ともなって変わる」という (古典的な関数の) 問題意識は生じない。
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- 「関数」のイメージが「数値の式」になっている (このイメージは不適切)。
「式」「数値」を「関数」のイメージにすると,ごく一部の関数が「関数」になるのみ。
また,式に表現することが高級(いいこと)であるわけでもない。
- 「定義域・値域」の取り上げ方が弱い。
したがって,「定義域・値域」に対する生徒の意識が,希薄になりやすい。
(定義域・値域は付随的なものではない。関数の要素概念である。)
学生番号と名前の対応表のような現実的な (卑近な) 表を関数の例にすれば,定義域・値域の押さえが重要であることが自ずとわかる。
しかし,現行の関数は数値の式であるために,定義域・値域の押さえに重要性・必然性が見えてこない。
総じて,現行の指導法では,関数が対象概念 (モノ) になっていない。
これが,関数が意味不明のものになる最も大きな理由。
そして,授業では「意味不明」が最悪。
註 : 教科書の例
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