Up 体系的教育に対する教員の能力の現状 作成: 2008-03-19
更新: 2008-03-19


    数学教育は,体系の教育として実現する。
    これは,いままでずっと,うまくいっていない。
    なぜ?

    体系の教育は,体系の論理の教育になり,よって論理の教育になる。
    そして,論理の教育がうまくいかない。
    理由は:

    1. 論理の教育は,もともと難しい
    2. 教員が「論理の教育」を理解していない


    数学を教える者は,つぎのことができねばならない:

    1. 論理を厳格に意識する
    2. 論理を正しくとらえる
    3. 論理を正しく指導する

    しかし,数学を教える教員でこれができる者は,稀である。
    なぜ?
    これができるようになるほど,数学を勉強/修行したことがないからである。
    ──免許取得に要する単位数 ( 参考1) が少しであり,その上,たいして勉強しない (「勉強しない大学生」)。


    実際,大学で数学をやっていなくとも,小学校で算数を教えることができる。
    この場合は,高校生が授業しているのと同じである。
    さらに,文系志望の高校生が授業しているのと同じである。

      今日,教員養成課程は,大学自身これを「文系」と考え,入試科目を「文系」で設定している。 したがって,入学する者の多くは高校数学を数学II で終えている。

    また,中学・高校で数学を教えるには,大学で数学を1種なら20単位,2種なら10単位とればよい。 これがどれほどの量かと言えば:
        20単位 = (15×20) 回の授業
        10単位 = (15×10) 回の授業
    たいした量でないことは,小・中・高の数学の授業時数 ( 参考2) と比べればわかる。

小学校教諭 中学校教諭 高等学校教諭
専修 1種 2種 専修 1種 2種 専修 1種
教科に関する科目 8 8 4 20 20 10 20 20
教職
に関する科目
教職の意義等
に関する科目
2 2 2 2 2 2 2 2
教育の基礎理論
に関する科目
6 6 4 6 6 4 6 6
教育課程及び指導法
に関する科目
22 22 14 12 12 4 6 6
生徒指導、教育相談及び
進路指導等に関する科目
4 4 4 4 4 4 4 4
総合演習 2 2 2 2 2 2 2 2
教育実習 5 5 5 5 5 5 3 3
教科又は教職に関する科目 34 10 2 32 8 4 40 16
その他 8 8 8 8 8 8 8 8

小学校教諭 中学校教諭 高等学校教諭
教科に関する科目 国語(含:書写)
社会
算数
理科
生活
音楽
図画工作
家庭
体育
代数学
幾何学
解析学
確率論·統計学
コンピュータ
代数学
幾何学
解析学
確率論·統計学
コンピュータ







教職の意義等
に関する科目
     
教育の基礎理論
に関する科目
     
教育課程
及び
指導法
に関する
科目
教科教育法に関する科目 算数科教育法 数学科教育法 数学科教育法
道徳教育に関する科目
特別活動に関する科目
教育の方法及び技術 (情
報機器及び教材の活用
を含む。)に関する科目
     
生徒指導、教育相談及び
進路指導等に関する科目
     
総合演習      
教育実習      
教科又は教職に関する科目      
※「教職に関する科目」,「教科に関する科目」
の法定単位超過分で補える
その他      


    参考2:小・中・高の数学の授業時数
小学校 中学校 高校 (括弧内の数は単位数)







1970 242 385 420 1047 140 140 140 420 必修
数学 I(6)
1980 311 350 350 1011 105 140 140 385 必修
数学 I (4)
数学A(2)
選択
基礎解析(3)
代数·幾何(3)
選択
微分·積分(3)
確率·統計(3)
1990 311 350 350 1011 105 140 140 385 必修
数学 I (4)
数学A(2)
選択
数学 II (3)
数学B(2)
選択
数学 III (3)
数学C(2)
2000
"ゆとり"
269 300 300 869 105 105 105 315 必修
数学 I (3)
数学A(2)
選択
数学 II (4)
数学B(2)
選択
数学 III (3)
数学C(2)