Up 寺尾寿, 1855-1923 作成: 2017-08-17
更新: 2017-08-18


  1. 数の意味
     『中等教育算術教科書 上巻』, 1888.
    pp.1,2.
    (さて),或る隊の中に兵卒五人あり,或る村の中に人家十二軒あるときは,五といい十二という数を以て,此隊の中の兵卒の多さといい此村の中の人家の多さという量の価格を言い著すことを得べし。
    此の如く或る数を以て或る量の価格を言い著すことを名けて此量を計るという。
    偖,此量を計る手数を分析して見るに,或は兵卒一人を目当として之に隊の中の兵卒の多さを比較シ,或は人家一軒を目当として之に村の中の人家の多さを比較シ,つまり計らんと欲する量と同じ種類の量を取て,之に今計らんとする量を比較するなり。
    箇様に或る種類の量を計る為に目当として用る所のものを此種類の量の単位と名づく。 故に或る種類の量の単位とは此種類に属する或る一定の量にして之に此種類の他の量を比較するものなり。

    p4.
    分数及び不尽数  或る量を計らんとするに,此量が丁度単位の幾倍かには等しからざることあり。
    例とえば物差を以て糸の長さを計るに,五寸よりは長く六寸よりは短きことあり。 或は糸の長さ一寸より短きことあり。
    箇様の場合にては,此糸の長さは幾寸なりということを得ず。 即ち前にいえる手数にて此長さを計ることを得ず。
    此時は単位を幾箇かの相等しき部分に分ち,此の一部分を以て今計らんとする量に比較すれば,猶此量の価格を知ることを得べし。
    例とえば一寸の長さを五つの相等しき部分に分ちて之に糸の長さを比較せんに,若し糸の長さが此一部分の三倍なるときは,此糸は一寸の五分の三という長さ有りといえば,分明に如何程の長さの糸なりということ知るるなり。

    寺尾がここで述べていることは,「数は量の比」である:

  1. 数の積の意味
      同上
    p.275
    凡て或る数を或る他の数に掛くるとは,後の数が表わす所の量に始めの数を掛けたるもの(即ち始の数が表わす所の量を其種類の量の単位にて作ると同様にして,後の数が表わす所の量を以て作りたる量)を表わすべき所の数を作ることなり。
    何を言っているかわからない文章なので,註を入れ (そして一箇所欠落を補い) つつ構造化して書けば:
    凡て或る数 [数2] を或る他の数 [数1] に掛くる [数1 × 数2] とは,
      後の数 [数1] が表わす所の量 [量b] に始めの数 [数2] を掛けたるもの
       ( 即ち始の数 [数2] が表わす所の量 [量c] を其種類の量の単位 [量b] にて作ると同様にして,
    後の数 [数1] が表わす所の量 [の単位] [量a] を以て作りたる量 [量c] )
      を表わすべき所の数 [数3]
    を作ることなり。

    寺尾がここで述べていることは,「数の積は量の比の合成」である:


  • 参考文献
    • 寺尾寿『中等教育算術教科書』, 敬業社, 1888.
        国立国会図書館デジタルコレクション
         上巻:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826851
         一巻:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826848
    • Bertrand, J., Traité d'Arithmetique, Paris, 1851.
       https://archive.org/details/bub_gb_TKY9yJUyNhAC

  • 参考ウェブサイト