Up かけ算は可換,だからかけ算に順序はない 作成: 2011-09-14
更新: 2011-09-14


    「かけ算の順序」のモンスターのタイプの一つに,《かけ算の可換性を「かけ算の順序はどちらでもよい」の根拠に用いる》がある。 根拠を立てる仕方が,「モンスター」である。

    数の積は,記号「×」の文法 (用法) を実現するように定義される。 定義されるその形は,自然数,分数,正負の数,‥‥ でいちじるしく違う。それは,《「×」の文法 (用法) を実現する形が,数ごとに違ってくる》ということである。

    <2数が×を夾む形>の定義は,記号「×」の文法 (用法) の規定である。 この規定を行うとき,「m×n あるいは n×m」の言い方をするわけにはいかない。
    実際,「m×n あるいは n×m」の言い方は,
(*)    <「m×n」と表現されることを俟っている対象>
= <「n×m」と表現されることを俟っている対象>
    が定理としてこれの前にあることにより,使える。
    しかし,記号「×」の用法は「数」一般を展望したものである。 「数」一般に対し (*) を定理にするということは,考えようがない。

    数学の流儀は,<2数が×を夾む形>での2数の順序を一旦定めるというものである。 そして,「かけ算は可換」は,この定義から導かれる定理として,後から出てくるものである。

    かけ算は可換,だからかけ算に順序はない」論者には,ここに述べた数学の方法を将来的に共有できる可能性のあるものと,共有のあり得ないものの,2種類がある。
    前者は,数学を知らないことによる「モンスター」である。

    後者は,「モンスター」とは区別しなければならない。
    実際これは,数学を物の写しとする立場──唯物論──である。
    唯物論においては, (*) が事実としてあり,そして数の積はこれの写しに他ならないから,「かけ算は可換,だからかけ算に順序はない」となる。
    これは,「モンスター」ではなく「イデオロギー」の部類になる。