Up 「2個/皿 × 3皿 = 6個」の計算 作成: 2011-08-01
更新: 2011-08-06


    「2個/皿 × 3皿 = 6個」の理由づけは,以下のようになる。

    量の<リンゴの個数>,<皿の枚数>の系を ,それぞれ ( (Qリンゴ, , ), ×, (N, +, ×) ), ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) で表す。 ここで,

    1. Qリンゴ は,<リンゴの個数>全体の集合。
    2. <リンゴの個数>には和が定義されている。このことを (Qリンゴ, ) で表す。
    3. <リンゴの個数>に対しては,数の倍作用が定義されている。
      数の系を (N, +, ×) で表し,× を倍作用の記号とする。
      なお,<リンゴの個数>の場合,Nにはふつう自然数 を択ぶことになる。
    4. 以上を合わせて,( (Qリンゴ, ), ×, (N, +, ×) ) と表す。
    5. ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) を,これと同様に定める。

    「リンゴ1個」と呼んでいるQリンゴの要素を,記号「」で表す。
    そこで,たとえば「リンゴ2個」は「× 2」と表される。
    同様に,「皿1枚」と呼んでいるQの要素を,記号「」で表す。
    そこで,たとえば「皿3枚」は「× 3」と表される。

    ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) と ( (Qリンゴ, ), ×, (N, +, ×) ) の間には,比例関係 (準同型) が考えられる。 比例関係 (準同型) 全体の集合を,Hom( Q, Qリンゴ) で表す。

    Hom( Q, Qリンゴ) の要素に対しては,和と数の倍作用が標準的に定義される:

    1. f, g ∈ Hom( Q, Qリンゴ) に対し,関数 (写像) fg をつぎのように定義する:
        (fg)( x ) = f( x ) g( x )   ( x ∈ Q )
    2. f ∈ Hom( Q, Qリンゴ) と n∈N に対し,関数 (写像) f×n をつぎのように定義する:
        (f×n)( x ) = f( x ) ×n   ( x ∈ Q,n∈N )

    ( (Hom( Q, Qリンゴ), ), ×, (N, +, ×) ) は, ( (Qリンゴ, ), ×, (N, +, ×) ), ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ) と同型な系になる。すなわち,量になる
    「密度」を量として扱うことがあるが,それはこういう数学をやっていることになる。

      「速さ」の場合だと,つぎのようになる:
      速さとは,時間と距離の間の比例関係のことである。これが量として扱われるときは,( (Hom( Q時間, Q距離), ), ×, (N, +, ×) ) を考えていることになる。──このときのNには,ふつう正の実数 が択ばれる。

    比例関係は,皿の枚数 (≠ 0) とリンゴの個数の対応ペアを一つ定めれば,それで決定される。
    いま,が対応する比例関係を「/」で表す。

    関数F : Hom( Q, Qリンゴ) × Q → Qリンゴ
        F(f, x) = f(x)  (f∈ Hom( Q, Qリンゴ),x∈ Q )
    で定義する。 これは複比例関数になるので,F(f, x) をテンソル積を用いて fx と書ける:
    特に,/ である。


    これらの準備を経て遂に,「(/ × 2) ( × 3) = × 6」としての「2個/皿 × 3皿 = 6個」の計算へと進むことができる。 即ち,つぎのようになる:

          (/ × 2) ( × 3)
        =F(/ × 2, × 3)
        =(/ × 2)( × 3)
        =((/ × 2)()) × 3
        =(((/)()) × 2) × 3
        × (2 × 3)
        ×

    さらに記号 を専ら使うことにすれば,つぎのようになる:

          (/ × 2) ( × 3)
        =((/ × 2) ()) × 3
        =(((/) ()) × 2) × 3
        × (2 × 3)
        ×