Up 鳥瞰図 (「積・商の立式」のロジック)  


    本論考は,「数は量の比」(数学) と「数は量の抽象」(学校数学) の対比を行うものである。 読者は,両者の違いを端的に示すビジュアルなイメージを最初にもてれば,本論考がよみやすくなるだろう。 そこで,「鳥瞰図」の趣で,「積・商の立式」のロジックをここで示す。

    ただし,ここで示すのは「数は量の比」の鳥瞰図である。
    「数は量の抽象」の鳥瞰図を示すことは無理なので,読者は,いまは,自分がかつて学校で勉強させられた数が「数は量の抽象」なのだと思っていただければよい。

    「数は量の比」の鳥瞰図を簡単に示せるのは,これが数学であるからだ。
    数学 (一般に科学) は,「最終的な簡単に行き着く」を方法にする。 数学は,用語や修辞を削り,最終的な構造を実現する。 だから,数学になったものを鳥瞰図に示すことは簡単である。
    「数は量の抽象」は,これとは事情が異なる。 これの「鳥瞰」は,一つの文化/邑の鳥瞰になる。これは,つくるのも難しいし,つくっても簡単な図にはならない。


    さて,積・商が立式されるときの数学 (「数は量の比」) のロジックを,つぎの A, B, C の3タイプで見ていく。

    1. 「○g (グラム) の△倍は何g?」の問題で,「何」に対し「○ × △」が立式される論理
      「○gを何倍したら△g?」「何gを○倍したら△g?」の問題で,「何」に対し「△ ÷ ○」が立式される論理

    2. 「隣り合う2辺が○m (メートル) と△mの長方形の面積は何m2?」の問題で,「何」に対し「○ × △」が立式される論理
      「隣り合う2辺が○mと何mの長方形の面積が△m2」の問題で,「何」に対し「△ ÷ ○」が立式される論理

    3. 「○m/秒 (メートル毎秒) で△秒間移動したときの距離は何m?」の問題で,「何」に対し「○ × △」が立式される論理
      「○m/秒で何秒間移動のとき距離が△m?」「何m/秒で○秒間移動のとき距離が△m?」の問題で,「何」に対し「△ ÷ ○」が立式される論理

    積・商の立式に至る推論で使われるのは,つぎのこと (だけ):

    1. 「○単位」は,「単位の○倍」の簡略表記。
    2. 「×」の文法 :「(量qの○倍)の△倍」→「量qの(○ × △)倍」(変形規則)
    3. 「÷」の文法 :「○と掛けて△になる数」→「△ ÷ ○」(変形規則)
      (「÷」は,積に交換法則が成り立つ数で定義される。)
    4. 長方形の一辺の長さを固定したとき,隣の一辺の長さと長方形の面積は比例する。
    5. 速さ(速度) の定義: 時間と距離の間の比例関係


    見ての通り,学校で授業している内容 (「数は量の抽象」) とは似ても似かない: