Up 「1と見る/1あたり量」は空回りのプロセス 作成: 2010-12-16
更新: 2010-12-18


    「数は量の抽象」の学校数学は,量の倍の問題に対しつぎの3つをセットにして解法をつくる:
        「1と見る/1あたり量」
        「線分図」(「数直線」)
        「比の3用法」

     註 : 特にこのことから,学校数学では「数直線」が基本主題になる。 一方数学では,「数直線」は量計算において無用のものである。


    以下,この解法が数学として何をやっているのかを,見ていく。

    「2gの3倍は何gか?」(比の第2用法の適用ということになる問題) を例にする。

    先ず,「g」の表現の数学的意味を,確認しておこう。 この表現は,重さと量形式 ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) (Nは , または , ) の間に,gに1を対応させる同型 (fとする) を立てていることを意味する。

    ところで「1と見る/1あたり量」は,重さと量形式 ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) の間に,さらにもう一つ同型を立てる。すなわち,2gに1を対応させる同型 (hとする) である。
    同型対応hでは,2gの3倍である何gに,1の3倍である3が対応する。
    ここまでで,つぎの図になる:

    つぎに「比の第2用法」の適用として「何=2×3」が立式される。
    やっていることがもし数学であるならば,「比の第2用法」の適用は定理の適用というものでなければならない。

    では,「比の第2用法」を定理の形で述べるとどうなるか?
    つぎのようになる:
    定理:
    f()=1である同型f: Q ─→ N,h(×m)=1である同型h: Q ─→ N,そしてn∈ N に対し, f((×m)×n) = m × n が成り立つ。
    実際,いまの問題は,がg,mが2,nが3の場合である。
    (×m)×nが 2gの3倍であり,これの数値f((×m)×n) が「何g」の「何」として求めるものである。 そして定理から,この数値がm×n,すなわち2×3であることが結論される。

    ここで改めて,定理を見てみよう。
    「1と見る/1あたり量」にあたる「h(×m)=1である同型h: Q ─→ N」は,何にも効いていない。
    実際,定理はつぎの形で済む:
    定理:
    f()=1である同型f: Q ─→ N,そしてn∈ N に対し, f((×m)×n) = m × n が成り立つ。
    「1と見る/1あたり量」は,ただ空回りしているのである。

    「数は量の抽象」の問題解法は,空回りする。
    こうなるのは,「数は量の抽象」がもともと循環論法だからである。