Up 遠山啓のディレンマ 作成: 2010-12-14
更新: 2010-12-14


    遠山啓は,現行の学校数学に対立軸をつくるというスタンスから,「数」の理論づくりに入っていった。 そして,このスタンスが無理・牽強付会をさせる。

    数学者である遠山には,当然自分の論の無理が見えてくる。
    実際,「数は量の比」に対する遠山の批判の中には,「数は量の比」に対しこれをモジュール (加群) の論として位置づける文言がある。 「数は量の比」の数学は,遠山に当然見えているわけである。
    また,「関係概念は難しいから,実体概念でやるのである」の文言もある。 これは,「量の比は難しいから,量の抽象でやるのである」の意味になる。

    しかし遠山は,もうこのまま行くしかない者に自らをしてしまった。 自分を信じ,ついてくる大集団がつくられてしまっているからである。

    一般に,これがプロジェクトの罠というものである。
    プロジェクトリーダは,自分のアイデアに最初自己陶酔する。 <永遠>を捉えたような気分になって,独善に走る。
    やがて,アイデアのほころび・間違いが見えてくる。
    しかし,プロジェクトは既に多くの者を引き込んでしまっている。 もう引っ込みがつかない。