Up 要 旨 作成: 2012-03-02
更新: 2012-03-05


    学校数学の分数・小数のかけ算・わり算の学習には,困難がある。
    学習困難のいちばんの理由は,内容が明証的でないことである。
    理解するとは,明証的に理解するということである。 しかし,もともと明証的でないものの明証的理解は,失敗するのみである。

    一方,学習者は,学習内容の明証性を,疑い得ないものにしている。 そして,このことは,教員にもあるとしなければならない。
    そこで,学校数学の分数・小数のかけ算・わり算の非明証性 (以下,<非明証性>という) を,ここに主題化する。


    <非明証性>には,3つの面がある。
    一つは,学校数学の分数・小数のかけ算・わり算の内容が,数学を過剰に用いるふうになっていることである。
    過剰であるから,循環論法もやっている。 そして,かなり高度な数学を用いている。
    これらの数学は,指導の中では非明示的に扱うしかない。 そして,非明示的に扱うということは,内容が非明証的になるということである。

    一つは,数学を<存在の事実の論述>にしていること──この意味で,リアリズムをやっていること──である。
    存在の事実は,明証することではない。呑み込むのみである。

    そして<非明証性>のもう一つの面は,<数は量の抽象>の立場である。
    これは,量をリアルの側に措くタイプのリアリズムである。
    数学は<数は量の比>である。 <数は量の抽象>は最初から無理な立場である。 そして,無理な立場は,無理な論法を強いる。 こうしてつくられるかけ算・わり算は,異形であり,そして非明証的である。

    ここに示した<非明証性>の内容は,数学との対照・対比を以て明らかにされるものである。