Up ダイナミクスの定立 作成: 2014-12-13
更新: 2015-02-13


    「学校数学のダイナミクスの捉え」のゴール形は,「ダイナミクスの定立」である。
    これは,数学教育学において手つかずのテーマである。


    「学校数学」という系は,「定まっていて,自由」の系と見なせる。
    いいかえると,「てっぺんがあって,その下は何でもあり」の系である。
    このような系は,<何でもあり>にシンクロが生じる。
    シンクロには,つぎの2タイプがある:
      1. 律動
      2. らせん運動

    律動は,「同じことの繰り返し」である。
    らせん運動は,らせん上昇し,根元の痩せ細りと自重によって倒壊する運動である。
    学校数学の系には,この両方が観察される。

    以下は「律動」である:
    • 学校数学は,「数学を」(「基礎基本」) と「数学で」(「生活単元」) の間の振り子運動を現す。
      振り子が一方の側にある期間は,およそ10年である。
    • 学校数学は,「数学的○○」(数学的考え方 → 数学的問題解決 → 数学的テラシー) の拍動運動を現す。
      これは,およそ20年周期である。

    「らせん運動」は,ジリ貧の組織の末期症状がだいたいこれになる。
    即ち,組織の現執行部は,自分の任期中は組織をつぶさないようにと目先の策を頼み,ババを後に回すことに努める。 この「ババを後に回す」が,「らせん運動」の形成になる。


    「律動」も「らせん運動」も,ともに数学教育学の主題にはしにくい。
    数学教育学は,「よくする」の立場につくことが当然というふうになっている。
    そして,「律動」「らせん運動」はどちらも,「よくする」の否定形になる。

    ここで,「律動」の方は,不穏当の趣きは避けられないにしても,工夫次第で主題にできる余地がある。
    しかし,「らせん運動」の方は,ほとんど無理と考えた方がよい。
    「よくする」をやっているつもりの者のすぐ横で,その行動のらせん運動性をつくことは,まったくの不謹慎ということになるからである。

    一方,「らせん運動」の事例に出遭えていることは,学校数学の系のダイナミクスを研究する立場からは,貴重な経験を得ていることになる。対象が大きければ,その経験はますます貴重なものになる。
    これの研究は,その内容を論ずることがいまは不謹慎になるとしても,20年くらい経てば,歴史研究になる。
    実際,歴史研究は,リアルな場面に自ら立ち遭った経験に勝るものはない。



     『マクロ数学教育学──定立と方法』