Up 自己組織化臨界──新教材開発は無用 作成: 2017-08-27
更新: 2017-08-27


    現前の学校数学は,熟成した学校数学である。
    熟成に十分な時間を経過して,いまの形がある。

    「十分な時間を経過して,いまの形がある」は,「自己組織化臨界 self-organized criticality」(「砂山崩し」) の見方も可能である。
    現前の学校数学は,《小崩落・大崩落を自己組織化の内容に包み込む》をメカニズムにした系維持が成っている相である。

    実際,新教材開発は無用である。
    それは,そのまま山の斜面を下にころがっていくか,既存のものをはじき出してそれと入れ替わるだけである。
    あるいは,最悪,珍奇な新教材投入がきっかけで大崩落が起こり,復旧のプロセスがこれに続く,ということでもある。
    ──山はそのままである。


    そもそも教材は,十分に練られてきた教材を,小・中・高,代数的・幾何的・解析的・確率的というふうに,複数のレベル,枠組から何度も取り上げるというのが,最善なのである。
    これが数学──形式・構造の学──の「わかる」のかたちであり,そしてこのかたちが学習者にとっても「わかる」に専心できてラクなのである。

    一方,数学教育学者は,これの真逆をやる傾向がある。
    なぜか。
    彼らは,「オリジナリティー」で自分の存在理由を立てねばならない者である。
    しかし「オリジナリティー」は困難なので,彼らは<新奇>を「オリジナリティー」に代える。
    こうして,わけのわからない,あるいは面倒くさいテーマを,教材として提起する者になっていく。