Up eix = cos x + i sin x 作成: 2017-10-26
更新: 2017-10-28


    指数関数 f(x) = e は,つぎの条件で定義されていることになる:
      1゜f(x1 + x2) = f(x1) × f(x2)
      2゜f′(0) = 1
    f(1) をe と表記し,f(x) を e と表記する,というわけである。


    条件1゜の「f(x1 + x2) = f(x1) × f(x2)」を形式とするものに,「平面上の回転」があった。
    即ち,複素数を用いたつぎの関数である:
      f:x├─→ cosx + i sinx (x∈ )

    では,関数f: x├─→ cosx + i sinx の場合,条件 2゜( f′(0) = 1 ) の方はどんなふうになるか?


    fの微分を試してみる:
      f'(x) = (cosx + i sinx)' = (cosx)' + i (sinx)'
         = (ーsinx) + i cosx
          ( = cos(x+π/2) + i cos(x+π/2) = (f(π/2))1f(x) = i 1 f(x) )
      f''(x) = (f'(x))' = ((ーsinx) + i cosx)'
         = (ーcosx) + i (ーsinx)
          ( = cos(x+π) + i cos(x+π) = (f(π/2))2f(x) = i 2 f(x) )
      f'''(x) = (f''(x))' = ((ーcosx) + i (ーsinx))'
         = sinx + i (ーcosx)
          ( = cos(x+3π/2) + i sin(x+3π/2) = (f(π/2))3f(x) = i 3 f(x) )
      f''''(x) = (f'''(x))' = ((ーsinx) + i (ーcosx))'
         = cosx + i sinx
          ( = cos(x+2π) + i cos(x+2π) = (f(π/2))4f(x) = i 4 f(x) )
    特に,
      f'(0) = i 1 = i
      f''(0) = i 2 = ー1
      f'''(0) = i 3 = ー i
      f''''(0) = i 4 = 1


    条件2゜( f′(0) = 1 ) とは違った。
    しかしこれは,条件2゜の拡張と見ることができる。

    そこで逆に,「e の方を,この条件を満たすものに拡張する」ということを考える。
    それは,()()()()「eix」を考えることで,実現される:
      f:x├─→ eix において,
      f'(x) = (eix)' = i eix
          ( = i 1 f(x) )
      f''(x) = (f'(x))' = (i eix)' = ーeix
          ( = i 2 f(x) )
      f'''(x) = (f''(x))' = (ーeix)' = ーieix
          ( = i 3 f(x) )
      f''''(x) = (f'''(x))' = (ーieix)' = eix
          ( = i 4 f(x) )
    特に,
      f'(0) = i 1 = i
      f''(0) = i 2 = ー1
      f'''(0) = i 3 = ー i
      f''''(0) = i 4 = 1

    こうして,「cosx + i sinx」と「eix」が,形式において全く同じものになった。
    そこで改めて,「eix」を, 「cos x + i sin x」の()()()()()()導入する:
        eix = cos x + i sinx


    強調するが, 「eix」は「cos x + i sinx」の別表記として導入されるものである。
    eを虚数乗するってどういうこと?」みたいに考えるものではない。
    「eix = cos x + i sinx」は,定理ではなく,定義である。

      「eix = cos x + i sinx」を定理と定め,「(eix のマクローリン展開) = (cos x のマクローリン展開) + i (sin x のマクローリン展開)」を証明として載せているテクストに出会うことがある。 これは間違いである。
      ()()()()マクローリン展開する」と「定理の証明としてマクローリン展開する」は,見掛けは同じでも,意味が違う。