Up 「行列式」の定義 作成: 2015-02-10
更新: 2015-02-12


    二つのベクトル1, 1 が張る平行四辺形の面積を考える:
    1, 1 を数ベクトルに表す:
    平行四辺形の面積は,つぎの計算で求められる:
  (a11 + a21 ) × (a12 + a22 )
  ー( a11 × a12 + a21 × a22 + 2 × (a12 × a21) )
= a11 × a22 ー a12 × a21

    いま,ベクトル (a11, a12 ) と (a21, a22 ) が張る平行四辺形の面積を
    あるいは
det( (a11, a12 ), (a21, a22 ) )
    で表すことにする。
    この記号法を,「行列式」と呼ぶ。
    上の計算より,行列式 det( (a11, a12 ), (a21, a22 ) ) はつぎのように定義することになる:
= a11 × a22 ー a12 × a21

    しかし,ここに一つ問題が生じる。
    ベクトル (a11, a12 ) と (a21, a22 ) が張る平行四辺形の面積は,ベクトル (a21, a22 ) と (a11, a12 ) が張る平行四辺形の面積を表すところの
    と同じであり,そして上の定義に従えば,つぎのようになる:
= a21 × a12 ー a22 × a11
    符合が互いに逆の面積が2つ導かれてくるわけである。
    この問題は,つぎのように定めることで,解決される:
      《行列式が定める「平行四辺形の面積」は,符合のついた平行四辺形の面積》
    即ち,行列式 det( (a11, a12 ), (a21, a22 ) ) の値の正負は,つぎのようになる:
      平行四辺形の中を,原点中心に,(a11, a12 ) を (a21, a22 ) に向けて回転する。
      回転方向の正負 (反時計回りが正) が,det( (a11, a12 ), (a21, a22 ) ) の値の正負。

の場合,
det( (a11, a12 ), (a21, a22 ) ) は,正値
det( (a21, a22 ), (a11, a12 ) ) は,負値


    さて,「行列式は平行四辺形の面積」は,3次元では「行列式は平行六面体の体積」になる。
    「平行四辺形の面積」はつぎの方法で導いたが,これはわかりやすいようにということで用いた方法であって,「平行六面体の体積」に延長できる方法ではない:
    3次元につながる方法は,以下のものである:
    1. 平行四辺形の面積は,底と定めた辺の長さと,この底に対して決まる高さで,求まる。
    2. 平行四辺形の底として,1 をとる。
    3. これに対する高さは,つぎのベクトルと同じ方向を向く:
        ′ = ( ーa12, a11 )
    4. ′ と2 のなす角をτとするとき,
        高さ = |2| cosτ
        cosτ = (′ , 2 ) / ( |′ | |2 | ) = (′ , 2 ) / ( |1 | |2 | )
      よって,
        高さ = (′ , 2 ) / |1 |
    5. 「底の長さ = |1| 」と「高さ = (′ , 2 ) / |1| 」より,
        平行四辺形の面積 = (′ , 2 )
    6. (′ , 2 ) をベクトルの成分で表す:
        (′ , 2 )
        = ( ( ーa12, a11 ), ( a21, a22 ) ),
        = a1122 ー a1221