Up 共変性・反変性 作成: 2017-11-28
更新: 2017-11-29


    以下,\( V \) を体k上のn次元ベクトル空間とする。


    \( V \) の基底を,二つ考える:
      \[ \{ {\bf e}_1 \,\cdots\, {\bf e}_n \} \\ \{ {{\bf e}^{'}}_1 \,\cdots\, {{\bf e}^{'}}_n \} \]
    そしてそれぞれの双対基底を
      \[ \{ {\bf f}^1 \,\cdots\, {\bf f}^n \} \\ \{ {{\bf f}^{'}}^1 \,\cdots\, {{\bf f}^{'}}^n \} \]
    とする。

    \( {\bf x} \in V \) に対し,
      基底 \( \{ {\bf e}_1 \,\cdots\, {\bf e}_n \} \) に対する \( {\bf x} \) の座標: \( (x^1\, \cdots \, x^n) \)
      基底 \( \{ {{\bf e}^{'}}_1 \,\cdots\, {{\bf e}^{'}}_n \} \) に対する \( {\bf x} \) の座標:\( ( {x^{'}}^1 \,\cdots\, {x^{'}}^n ) \)
    とする。
    また,\( {\bf y} \in V^* \) に対し,
      基底 \( \{ {\bf f}^1 \,\cdots\, {\bf f}^n \} \) に対する \( {\bf y} \) の座標: \( (y_1\, \cdots \, y_n) \)
      基底 \( \{ {{\bf f}^{'}}^1 \,\cdots\, {{\bf f}^{'}}^n \} \) に対する \( {\bf y} \) の座標:\( ( {y^{'}}_1 \,\cdots\, {y^{'}}_n ) \)
    とする。

    基底変換:
      \[ \{ {\bf e}_1 \,\cdots\, {\bf e}_n \} \longrightarrow \{ {{\bf e}^{'}}_1 \,\cdots\, {{\bf e}^{'}}_n \} \]
    の表現行列を,\( A = ( {a^j}_i ) \) とする:
      \[ ( {{\bf e}^{'}}_1 \,\cdots\, {{\bf e}^{'}}_n ) \,=\, A\, ( {\bf e}_1 \,\cdots\, {\bf e}_n ) \]
    とする。
    このとき,つぎが成り立つ:
      \[ ( {y^{'}}_1 \,\cdots\, {y^{'}}_n ) \,=\, A\, (y_1\, \cdots \, y_n) \\ ( {x^{'}}^1 \,\cdots\, {x^{'}}^n ) \,=\, A^{-1}\, (x^1\, \cdots \, x^n) \\ \]

    これを,つぎのように見る:
      「\( V^* \) では,基底の変化に対し \( V \) の座標が共変する
       \( V \) では,基底の変化に対し \( V \) の座標が反変する」
    そして,つぎのようにいう:
      「\( V^* \) のベクトルの成分は,\( V \) の基底の変化と共変的 (covariant)
       \( V \) のベクトルの成分は,\( V \) の基底の変化と反変的 (contravariant)」



    備考 :「反変の変化率」
    ここで,つぎの問題を立てる:
      基底の変化に対するベクトル \( {\bf x} \) の成分の変化率は?
    「座標が変わる」でお終いにするのではなく, 「変わり方」を考えようというわけである。

    座標変換は,つぎのようになる:
      \[ x^i = ( {a^1}_i\, \cdots \, {a^n}_i ) \left( \begin{array}{c} {x^{'}}^1 \\ \vdots \\ {x^{'}}^n \\ \end{array} \right) = {a^1}_i {x^{'}}^1 + \cdots + {a^n}_i {x^{'}}^n \]

    \( {a^1}_i {x^{'}}^1 + \cdots + {a^n}_i {x^{'}}^n = x^i \) より,
      \[ {a^j}_i = \frac{\partial}{\partial {x^{'}}^j} ( {a^1}_i {x^{'}}^1 + \cdots + {a^n}_i {x^{'}}^n ) = \frac{\partial x^i}{\partial {x^{'}}^j} \]
    即ち,つぎのようになる:
      \[ ( {a^1}_i \,\cdots \, {a^n}_i ) = \left( \frac{\partial x^i}{\partial {x^{'}}^1}, \,\cdots ,\, \frac{\partial x^i}{\partial {x^{'}}^n} \right) \]
    \( (\, {a^j}_i \,) \) が \( \{ {\bf e}_1 \,\cdots\, {\bf e}_n \} \) から \( \{ {{\bf e}^{'}}_1 \,\cdots\, {{\bf e}^{'}}_n \} \) への基底変換であるとは,
      \[ {{\bf e}^{'}}_i = ( {\bf e}_1\, \cdots \, {\bf e}_n ) \left( \begin{array}{c} {a^i}_1 \\ \vdots \\ {a^i}_n \\ \end{array} \right) \]
    よって,
      \[ {{\bf e}^{'}}_i = ( {\bf e}_1\, \cdots \, {\bf e}_n ) \left( \begin{array}{c} \frac{\partial x^1}{\partial {x^{'}}^i} \\ \vdots \\ \frac{\partial x^n}{\partial {x^{'}}^i} \\ \end{array} \right) \]
    1次元にすると,
      \[ {\bf e}^{'} = \frac{dx}{d{x^{'}}} {\bf e} \]
    即ち
      \[ {\bf e}^{'} = \frac{1}{ \frac{dx^{'}}{dx} } {\bf e} \]
    この式は,基底の変化に対しベクトルの座標の変化が「反変」であることを示す。
    (「測度の単位を大きくすると,測定値が小さくなる」)