Up 「共変・反変」の意味 作成: 2018-02-08
更新: 2018-02-08


    「共変・反変」の起点は,特定された線型空間の基底である。
    「共変・反変」は,この基底の変換に対する共変・反変である。

     強調 :「共変・反変」は,絶対的に決まるのではない。
        起点と定めた線型空間と相対的である。

    「共変・反変」は,以下の順序で決まっていく:


    1. 基底 \({\bf e}\) を構成するベクトルを,一行行列の形に並べる: \[ ( {\bf e}_1,\, \cdots, \, {\bf e}_n ) \] ここで,添字の下付けは,「共変」の意味である。
      「基底はそれ自身に対して共変」,ということである。

    2. 基底変換 \[ {\bf e} \to {\bf e'} \] に対し, \( {\bf e'}\) は「共変」である。
      よって,\({\bf e'}\) を構成するベクトルの添字は下付けである: \[ ( {\bf e'}_1,\, \cdots, \, {\bf e'}_n ) \]
    3. つぎを,この基底変換の式とする: \[ ( {\bf e'}_1,\, \cdots, \, {\bf e'}_n ) = ( {\bf e}_1,\, \cdots, \, {\bf e}_n ) \left( \begin{array}{ccc} a^1_1 & \cdots & a^1_n \\ & \cdots & \\ a^n_1 & \cdots & a^n_n \\ \end{array} \right) \] これから,つぎの座標変換が導かれる:
      \[ \left( \begin{array}{c} x'^1 \\ \vdots \\ x'^n \\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccc} a^1_1 & \cdots & a^1_n \\ & \cdots & \\ a^n_1 & \cdots & a^n_n \\ \end{array} \right)^{-1} \left( \begin{array}{c} x^1 \\ \vdots \\ x^n \\ \end{array} \right) \]
      \( n = 1\) の場合だと, \[ {\bf e'} = a\, {\bf e} \\ x' = a^{-1}\, x \] これは,「基底変換に対し座標変換は反変」を表す。
      そこで,座標の添字は,「反変」を表すところの上付きにする。
      実際,この結論を見越して,ここまで座標の添字を上付きにしてきたわけである。

    4. 行列の \(a^j_i\) は,どうなるか。
      \[ \left( \begin{array}{c} x^1 \\ \vdots \\ x^n \\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ccc} a^1_1 & \cdots & a^1_n \\ & \cdots & \\ a^n_1 & \cdots & a^n_n \\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} x'^1 \\ \vdots \\ x'^n \\ \end{array} \right) \\ \\ \Longrightarrow x^i = a^i_1 {x'}^1 \,+\, \cdots,\,+\, a^i_n {x'}^n \\ \Longrightarrow \frac{\partial {x}^i}{\partial {x'}^j} = a^i_j \]
      \(a^i_j = \frac{\partial {x}^i}{\partial {x'}^j}\) は,\( x^i \) と共変, \( x^j \) と反変。
      「\( x^i \) と共変」は「基底変換と反変」,「\( x^j \) と反変」は「基底変換と共変」。
      これを,「\(i\) は基底変換と反変」「\(j\) は基底変換と共変」と読んで,\(i\) を「反変」を表すところの上付けにし,\(j\) を「共変」を表すところの下付けにする。
      実際,この結論を見越して,ここまで変換行列の項の添字をこのようにしてきたわけである。