Up 「仕事」の定義 作成: 2017-12-19
更新: 2017-12-23


    空間 \( S \) は,ここまでの設定で,ポテンシャル場かつ力場となった。

    S を体K上の3次元ベクトル空間とする。
    「ポテンシャル場」は,Sの上のスカラー値関数 f である:
      \[ f : S \longrightarrow K \]
    xyz 座標を定め,「ポテンシャル勾配」をつぎの関数として定義する:
      \[ f^{'} : {\bf x} \longmapsto \left( \frac{\partial f({\bf x})}{\partial x}, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial y}, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial z} \right) \ \ \ \ ({\bf x} \in S) \]

    「力場」は,質量全体と力全体をそれぞれ体K上のベクトル空間 \( M,\, F \) としたときの,つぎの関数である:
      \[ {\bf X} : S \longrightarrow Hom(M,\,F) \]
    \( {\bf X}({\bf x}) \) は,\( {\bf x} \) に単位質量が置かれるときにこれが受ける力であり,「単位質量当たり力」を意味している。

    ここで,質量を単位質量に固定することを以て,\( Hom(M,\,F) \) を \( F \) と同一視する。
    また, \( F \) を3次元とし,これを体K上の3次元ベクトル空間 \( K \times K \times K \) と同一視する。
    ──即ち,\( F \) の基底 \( ( {\bf u}_1, {\bf u}_2, {\bf u}_3 ) \) を一つ定め,つぎの同型対応を以て \( F \) と \( K \times K \times K \) を同一視する:
      \[ x^1\,{\bf u}_1 + x^2\,{\bf u}_2 + x^3\,{\bf u}_3 \longmapsto (x^1,\,x^2,\,x^3 ) \ \ \ \ \ (\, x^1,\,x^2,\,x^3 \in K \,) \]
    こうして,\( {\bf X} \) は,つぎの関数になる:
      \[ {\bf X} : S \longrightarrow K \times K \times K \]
    そしてこの \( {\bf X} \) から,関数
      \[ {\bf X}_x,\, {\bf X}_y,\, {\bf X}_z : S \longrightarrow K \]
    をつぎのようにして導く:
      \[ {\bf X}({\bf x}) = \left( {\bf X}_x({\bf x}), {\bf X}_y({\bf x}), {\bf X}_z({\bf x}) \right) \]


    以上で準備が成ったので,これより単位質量が移動するときの仕事を求める。

    仕事は,「力と微小移動ベクトルの内積」を移動経路に沿って積分したものになる。
    しかし,「ポテンシャル」は,「移動の仕事量は移動のルートに依らない」を含蓄する。
    そこで,仕事の定義は,「仕事量微分係数の区間積分」がこれの形になる。

    「仕事量微分係数」として,「f の \( {\bf X}- \)微分係数」を,つぎの内積で定義する:
      \[ f^{'}({\bf x}) \cdot {\bf X}({\bf x}) \\ = \left( \frac{\partial f({\bf x})}{\partial x}, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial y}, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial z} \right) \cdot \left( {\bf X}_x({\bf x}), {\bf X}_y({\bf x}), {\bf X}_z({\bf x}) \right) \\ = \frac{\partial f({\bf x})}{\partial x} {\bf X}_x({\bf x}) \,+\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial y} {\bf X}_y({\bf x}) \,+\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial z} {\bf X}_z({\bf x}) \\ = \left( \frac{\partial f({\bf x})}{\partial x} ,\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial y} ,\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial z} \right) \left( \begin{array}{c} {\bf X}_x({\bf x}) \\ {\bf X}_y({\bf x}) \\ {\bf X}_z({\bf x}) \\ \end{array} \right) \]

    Sの点 \( {\bf a} \) から \( {\bf b} \) へ,曲線Cを描いて単位質量が移動するときの仕事は,つぎの線積分になる:
      \[ \int_C \left( \frac{\partial f({\bf x})}{\partial x} {\bf X}_x({\bf x}) \,+\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial y} {\bf X}_y({\bf x}) \,+\, \frac{\partial f({\bf x})}{\partial z} {\bf X}_z({\bf x}) \right) \, d{\bf x} \]
    ここで,積分は曲線 \( C \) に依存しない──移動の始点・終点の \( {\bf a}, {\bf b} \) で決まる。


つぎの図は,実際は3次元であるSを,  
fを描くために2次元に表したものである: