Up 反変・共変 作成: 2017-12-17
更新: 2017-12-18


    「速さ×時間=距離」は,計算に出てくる量がつぎの3つになった:
        時間,時間*,速さ

    時間の単位 \( {\bf s}, {\bf s}^{'} \) に対し,\( {\bf t} = x\, {\bf s} = x^{'}\, {\bf s^{'}} \) とする。
    このとき \( {\bf s^{'}} = a\, {\bf s} \) であれば,
      \[ x\, {\bf s} = x^{'}\, {\bf s^{'}} = x^{'}\, a\, {\bf s} \ \ \Longrightarrow\ \ x^{'} = \frac{1}{a} x \]
    単位がa倍になると,測定値は a-1 になる。

    \( {\bf s^{'}} = a\, {\bf s} \) に対する双対単位の変化はどうか。
    任意の時間 \( {\bf t} = y\,{\bf s}^{'} = y\,a\,{\bf s} \) に対し,
      \[ {{\bf s}^{'}}^*({\bf t}) = {{\bf s}^{'}}^*(y\,{\bf s}^{'}) = y\,{{\bf s}^{'}}^*({\bf s}^{'}) = y \\ {\bf s}^*({\bf t}) = {\bf s}^*(y\,a\,{\bf s}) = y\,a\,{\bf s}^*({\bf s}) = y\,a \\ \ \ \Longrightarrow \ \ {{\bf s}^{'}}^*({\bf t}) = a^{-1} {\bf s}^*({\bf t}) \\ \ \ \Longrightarrow \ \ {{\bf s}^{'}}^* = a^{-1} {\bf s}^* \]
    即ち,時間の単位がa倍になると,双対単位は \( a^{-1} \) 倍になる。

    また,\( x\, {\bf s^*} = x^{'}\, {\bf {s^{'}}^*} \) のとき,
      \[ x^{'} = x^{'}\, ({\bf {s^{'}}}^*({\bf s^{'}})) = x^{'}\, ({\bf {s^{'}}}^*(a\, {\bf s})) = (x^{'}\, {\bf {s^{'}}}^*)(a\, {\bf s}) \\ = (x\, {\bf s^*})(a\, {\bf s}) = x\, ({\bf s^*}(a\, {\bf s})) = (x\,a)\, ({\bf s^*}({\bf s})) \\ = x\,a \]
    即ち,時間の単位がa倍になると,双対単位による測定値は a倍になる。

    時間の単位の \(a\) 倍に対し,\(a\) 倍になるのを共変,\(a^{-1}\) 倍になるのを反変ということにする。
    そこで,つぎのようになる:
       時間の単位の変化に対し,
     時間の単位の変化は共変,時間の単位による測定値の変化は反変
     時間* の単位の変化は反変,時間* の単位による測定値の変化は共変


    テンソルの「T」に添字をつけることをここまでやってきているが,上付け・下付けの別は,実は,共変・反変を規準につけてきている。
    この規準を,一般のn次元ベクトル空間Vとこれの双対空間V* に対して述べるとしよう (量は1次元ベクトル空間である)。

    Vの基底 \(E\) に対し,\(E^*\) (\(E\) の双対) をV* の基底とする。
    n次元ベクトル空間の場合,「\(a\)倍・\(a^{-1}\) 倍」は,行列の「\(A\)倍・\(A^{-1}\) 倍」になる。
    \(E\) の変化に対し,\(E\) 自身は共変である。
    このことを,\(E\) を構成するベクトルの添字を下付けにすることで表す:
      \[ E = ( {\bf e}_1, \cdots, {\bf e}_n ) \]
    \(E\) の変化に対し,\(E\) による座標の変化は反変である。
    このことを,座標の添字を上付けにすることで表す:
      \[ \left( \begin{array}{c} x^1 \\ \vdots \\ x^n \\ \end{array} \right) \]
    \(E\) の変化に対し,\(E^*\) は反変である。
    したがって,\(E^*\) を構成するベクトルの添字は上付けになる。
      \[ E^* = ( {\bf f}^1, \cdots, {\bf f}^n ) \]
    \(E\) の変化に対し,\(E^*\) による座標は共変である。
    したがって,\(E^*\) の係数の添字は下付けになる。
      \[ \left( \begin{array}{c} y_1 \\ \vdots \\ y_n \\ \end{array} \right) \]


    共変・反変の区別は,ゆるがせにできない。
    量計算で数値を「分母の方におくか・分子のほうにおくか」がこれの内容だからである。

    長さ密度の「重さ÷長さ」は,「2g と3m」だと
      \[ 2\,{\bf g} \otimes 3^{-1}\,{\bf m}^* = \frac{2}{3}\,({\bf g} \otimes {\bf m}^*)\ \ \ (\,=「\frac{2}{3}\,g/m」) \]
    となり,「3m」の「3」は下にくる。
    一方,長方形の面積の「タテ×ヨコ」は,「2mと3m」だと
      \[ 2\,{\bf m} \otimes 3\,{\bf m} = (2 \times 3)\,({\bf m} \otimes {\bf m})\ \ \ (\,=「(2 \times 3)\,m^2」) \]
    となり,「3m」の「3」は上にくる。
    そして「この上下の分かれは何か」を理論化すると,「共変・反変」の概念になるのである。

    共変・反変の区別は,「共変・反変を区別できないと量計算はできない」というほどの内容である。