Up テンソル「速さ」 作成: 2017-12-17
更新: 2017-12-18


    速さは,時間から距離への比例関数のことである。
    時間,距離を,体K上の1次元ベクトル空間と見なす。
    このとき,速さは,時間から距離への線型写像のことである。

    速さ「5秒で2m」は,つぎの関数に分解される──ここで「s」は「秒」:
      \[ \begin{array}{c} \\ 時間 \\ t\,{\bf s} \\ \end{array} \begin{array}{c} {\bf s}^* \\ \longrightarrow \\ \\ \end{array} \begin{array}{c} \\ K \\ t \\ \end{array} \begin{array}{c} 5^{-1} \\ \longrightarrow \\ \\ \end{array} \begin{array}{c} \\ K \\ 5^{-1}t \\ \end{array} \begin{array}{c} {\bf m}^+ \\ \longrightarrow \\ \\ \end{array} \begin{array}{c} \\ 距離 \\ 5^{-1}t\,{\bf m} \\ \end{array} \begin{array}{c} 2 \\ \longrightarrow \\ \\ \end{array} \begin{array}{c} \\ 距離 \\ t\,((5^{-1}×2)\,{\bf m}) \\ \end{array} \\ \]
    これを,つぎの2つの関数の合成に見る:
      \[ 5^{-1}{\bf s}^* :時間 \longrightarrow K \\ 2\,{\bf m}^+\ : K \longrightarrow 距離 \]
    Kは,K上の1次元ベクトル空間である。
    \( 5^{-1}{\bf s}^* \) は,時間* = Hom(時間, K) の要素である。
    \( 2\,{\bf m}^+ \) は,Hom(K,距離) の要素であり,そして Hom(K,距離) は距離と同一される。

    時間の単位を \( \bf s \) (→ 時間* の単位を \({\bf s}^*\) ) に,距離の単位を \( {\bf m} \) に,それぞれ固定する。
    速さ「5秒で2m」は,つぎを枠にして表現されるものになる:
      \[ 時間^* = K\,{\bf s}^* \ \ (\,=\, \{ k\,{\bf s}^* \,|\, k \in K \} ) \\ 距離\ = K\,{\bf m} \]
    そしてこの表現枠を1つの対象概念にしようとするとき,それはテンソルになる:
      \[ {T_s}^m \,=\, K\,{\bf s}^* \otimes K\,{\bf m} \]

    \(T\) には単位の記号が添字についている。
    上下に分かれているが,この上下配置は規則に従うものである。
    この規則については,「共変・反変」のところで説明する。
    いまはつぎのように了解せよ:
      双対単位は,下
      そうでないのは,上


    \( {T_s}^m \) は,実際に「速さ×時間」である。
    これの要素は,つぎの形に書かれる:
      \[ (x\, {\bf s}^*) \otimes (y\, {\bf m}) \ \ \ \ (\, x,\, y \in K\,) \]
    「5秒で2m」だと,「\( 5^{-1}\,{\bf s}^* と2\,{\bf m} \)」に捉え直されて,つぎのようになる:
      \[ (5^{-1}\, {\bf s}^*) \otimes (2\, {\bf m}) \]
    「5秒で2m」の表現に対しては「0.4 m/秒」の表現に替えたりするわけであるが,テンソルの文脈では,これはつぎの計算──テンソルの複線型性の適用──をしていると解釈される:
      \[ (5^{-1}\, {\bf s}^*) \otimes (2\, {\bf m}) = {\bf s}^* \otimes ((5^{-1} \times 2)\, {\bf m}) = {\bf s}^* \otimes (0.4\, {\bf m}) \]