Up 「テンソルとは何か」への答え :「量の公式 作成: 2017-12-12
更新: 2017-12-25


    「テンソル」は,それとは知らずに,身近にしてきているものである。
    小学生がやっている「タテ×ヨコ」や「距離÷時間」は,テンソルである。
    実際,量の公式を立てれば,それはテンソルになっている。
    また物理法則として出てきた公式は,そのままではテンソルではなくとも,テンソルの形に還元できるものである。

    テンソルを身近にしてきたことは,テンソルを勉強してきたことではない。
    テンソルを勉強するとは,テンソルを自覚的に対象としてもち,これの意味・理由の理解と用法の修得に取り組む,ということである。
    これは,専門の領分になる。
    自然数は小学1年からやっているが,自然数論だと専門数学の領分になるのと同じである。


    テンソルを勉強することになった者は,「テンソルとは何か?」の問いをもつ。
    学習テクストには,テンソルとは何かが書いていないからである。

    この問いは,定義の類を示すことは答えにならない。
    なぜなら,この問いの「何か?」は,「なぜこの定義なのか?」「なぜこの構成なのか?」を含んだ大きな「何か?」なのである。
    要するに,学習者は,どんな世界が自分に示されてきたのか,さっぱりわからないのである。

    彼らに対するいちばんよい答えの形は,「‥‥がわかる・できるために勉強するもの」である。
    そして「テンソル」の場合は,「公式がなんたるかをわかるために勉強するもの」である。
    実際,公式がなんたるかをわかるためにために必要となるのが,「テンソル」の概念である。


    「公式」とは何か。

    「公式」は,文字で記述される。
    なぜか?
    「公式」は,<普遍>の表現として立てるものである。
    <普遍>のかたちは<形式>──状況依存の<内容>に対する<形式>──である。
    その<形式>は,文字で記述することになる。

    状況依存となるのは,計測者である。
    ここで「計測者」は,それが存在する空間の位置・位相の特殊性と,測度の任意性を意味する。
    「公式」として立てようとするのは,普遍的な式である。
    普遍的であるとは,<形式>において計測者に依存しないということである。

    計測者が立てる式には,変数 variable と定数 constant がある。
    定数には,具体的な値が入る。
    「公式」では,その定数が文字になる。
    「公式」の文字はすべて変数 variable であるが,この変数は二つのカテゴリーに分かれる。
    一つは定数的変数であり,計測者にとって定数 (=具体値) になるものである。
    そしてもう一つは変数的変数であり,計測者にとって変数になるものである。

    「計測者に依らない」「形式として普遍」は,何を以てこうであるとするか。
    即ち,「計測者に依らない」「形式として普遍」の規準 criteria は何か。
    規準は,「座標変換に対する可換性」である。

    即ち,計測者のいる空間の特殊性,計測者の測度の任意性を,「座標の特殊性」ということに一般化する。
    こうして一人の計測者は一つの座標系のことになる。
    この座標系群のなかの座標系一つ一つについて,座標変換を試す。
    そしてそのそれぞれで「公式」にしようとする形式が保たれていれば,「公式が成った」とする。


    この内容を,理論にする。
    こうして出来上がってくるのが,「テンソル」の理論である。
    「テンソル」とは,端的に, 「式」である。

    「テンソルとは何か」の問いに対して答えることになるのは,このような要約である。