Up 「テンソルとは何か」への答え 作成: 2017-12-12
更新: 2017-12-12


    テンソルは,「量の公式」を立てるとき,登場する。
    このときの「量の公式」は,その中身が各種量の値の線型計算になっているものである。

    ベクトルは,テンソルである。
    スカラーも,テンソルである。
    したがってテンソルは,小学1年の算数のときから登場している。
    「テンソル」のことばを使うならば,学校数学はずっとテンソルが中心である。

    テンソルをやっていることは,テンソル論をやっていることではない。
    テンソル論は,専門数学の領分になる。
    自然数は小学1年からやっているが,自然数論だと専門数学の領分になるのと同じである。

    よって「テンソルとは何か」の答えは,一方の極に<技術を答える>がありもう一方の極に<理論を答えるがある,というぐあいになる。
    技術のことを専らにすれば,相手は意味がわからない。
    理論のことを専らにすれば,これも相手は意味がわからない。
    意味がわかるとは,目的とやっていることの両方がわかることである。


    目的は,「量の公式」を立てることである。
    このために使うことになるのが,技術としてのテンソルである。
    そして,この技術を自覚的に使おうとするとき,わかることが必要になるのが,概念としてのテンソルである。


    「公式」は,文字で記述される。

    「公式」は,自身を普遍的形式として立てようとするものである。
    そして,普遍的形式は文字で記述することになる。
    なぜか?
    形式に対するところの内容は,状況依存だからである。

    「公式」で状況依存となるのは,量の測定者である。
    ここで「測定者」は,それが存在する空間の位置・位相の特殊性と,測度の任意性を意味する。
    「公式」として立てようとするのは,普遍的な式である。
    普遍的であるとは,<形式>において計測者に依存しないということである。

    測定者が立てる式には,変数 variable と定数 constant がある。
    定数には,具体的な値が入る。
    「公式」では,その定数が文字になる。
    「公式」の文字はすべて変数 variable であるが,この変数は二つのカテゴリーに分かれる。
    一つは定数的変数であり,測定者にとって定数 (=具体値) になるものである。
    そしてもう一つは変数的変数であり,測定者にとって変数になるものである。

    「測定者に依らない」「形式として普遍」は,何を以てこうであるとするか。
    即ち,「測定者に依らない」「形式として普遍」の規準 criteria は何か。
    規準は,「座標変換に対する可換性」である。

    即ち,測定者のいる空間の特殊性,測定者の測度の任意性を,「座標の特殊性」ということに一般化する。
    一人の測定者が抱える座標系は,したがって複数である──<測定者=座標系群>。
    この座標系群の中の座標系一つ一つについて,測定者間の座標変換を試す。
    そしてそのそれぞれで「公式」にしようとする形式が保たれていれば,「公式が成った」とするのである。


    以上の作業が,「テンソルの作業」である。
    「テンソルとは何か」の問いに対して答えることになるのは,作業としてのテンソルである。

    特に,テンソルの意味は,専門数学のテンソルの中には無い。
    実際,教育的観点から,ここは重要な点である。
    「テンソルとは何か」を知ろうとして数学にあたろうとするのは,方向違いなのである。
    学習者に対しては,このことをしかと伝えてやる必要がある。