Up 証明の例 作成: 2010-07-02
更新: 2010-07-02


    命題Pが真であることの証明は,つぎが成り立つ命題Qを示すことである:

    1. Qは真。
    2. QからPが導かれる。

    特に,命題Pが偽 (¬Pが真) であることの証明は,つぎが成り立つ命題Qを示すことである:

    1. Q は真。
    2. Q から ¬Pが導かれる。

    ここでは,新しい命題Qをつくり出すことになる。
    Qは,Pから直接示唆されるものではない。 Qをつくり出すのは,証明しようとする者の創意である。

    以下,証明の例を示す。


    証明が起こる<理論>として,0を含む自然数論を考える。
    そして,つぎの8つの命題の真偽を証明する:

      1:(∀x) ( (∀y) (x<y) )
      2:(∀y) ( (∀x) (x<y) )
      3:(∀x) ( (∃y) (x<y) )
      4:(∀y) ( (∃x) (x<y) )
      5:(∃x) ( (∀y) (x<y) )
      6:(∃y) ( (∀x) (x<y) )
      7:(∃x) ( (∃y) (x<y) )
      8:(∃y) ( (∃x) (x<y) )

    最初にすることは,命題の真偽を見込むことである。
    そして,このためには,命題の意味を読み取れねばならない。

    上の8つの命題の意味は,それぞれつぎのようになる:

      1:どの数でも,「自分はどの数よりも小さい」が成り立つ。
      2:どの数でも,「自分はどの数よりも大きい」が成り立つ。
      3:どの数でも,「自分より大きい数がある」が成り立つ。
      4:どの数でも,「自分より小さい数がある」が成り立つ。
      5:「自分はどの数よりも小さい」が成り立つ数がある。
      6:「自分はどの数よりも大きい」が成りつ数がある。
      7:「自分より大きい数がある」が成り立つ数がある。
      8:「自分より小さい数がある」が成り立つ数がある。

    そして,その真偽はつぎのようになる:

      1:偽
      2:偽
      3:真
      4:偽
      5:偽
      6:偽
      7:真
      8:真

    なぜなら:

      1:例えば0では,「自分はどの数よりも小さい」が成り立たたない。
      2:例えば0では,「自分はどの数よりも大きい」が成り立たたない。
      3:どの数でも,自分の後者は,自分より大きい数の一つである。
      4:0では,「自分より小さい数がある」が成り立たたない。
      5:どの数でも,「自分はどの数よりも小さい」が成り立たない。
         例えば,自分は自分自身より小さくない。
      6:どの数でも,「自分はどの数よりも大きい」が成り立たない。
         例えば,自分は自分自身より大きくない。
      7:例えば0では,「自分より大きい数がある」が成り立つ。
         自分より大きい数として,例えば1がある。
      8:例えば1では,「自分より小さい数がある」が成り立つ。
         自分より小さい数として,例えば0がある。

    そして,つぎのように述べることが,証明になる:

      1 は真,また Q1 から ¬P1 が導かれる。よって,P1 は偽。
      2 は真,また Q2 から ¬P2 が導かれる。よって,P2 は偽。
      3 は真,また Q3 から P3 が導かれる。よって,P3 は真。
      4 は真,また Q4 から ¬P4 が導かれる。よって,P4 は偽。
      5 は真,また Q5 から ¬P5 が導かれる。よって,P5 は偽。
      6 は真,また Q6 から ¬P6 が導かれる。よって,P6 は偽。
      7 は真,また Q7 からP7 が導かれる。よって,P7 は真。
      8 は真,また Q8 からP8 が導かれる。よって,P8 は真。