実数の拡張
複素数の表記「a+bi」の先の導入 (
複素数の表記 (2タイプ)
) は,実は,厳密性を欠いています。
実際,「a+bi」に対してわたしたちは「a+b × i」の見方 (和と積への分解) をしますが,先の定義では,これの説明がつきません。
複素数の定義から「a+b × i」の見方に進む間には,「実数の拡張」のステップがあります。──以下,これを示します。
「6.2 複素数の表記 (2タイプ)」
で述べたつぎの複素数の作用に戻り,これを (x, y) と表現しましょう:
以下,実数の+,× に対し,複素数の+,×を
+
,
×
で表すことにします。
先ず,
(a, 0)
+
(b, 0) = (a+b, 0), (a, 0)
×
(b, 0) = (a × b, 0)
(0, 0)
+
(a, b) = (a, b) ( (0, 0) は複素数の零元)
(1, 0)
×
(a, b) = (a, b) ( (1, 0) は複素数の単位元)
が成り立つので,つぎのことが言えます:
複素数は実数の拡張で,実数 a には複素数 (a, 0) が対応する。
実数の 0(零元), 1(単位元) には,複素数の 0, 1 がそれぞれ対応する。
そこで, (a, 0) を単に a と書きます。
さらに i = (0, 1) とおくと,複素数の表現「a
+
b i」が得られます:
(a, b) = (a, 0)
+
(0, b) = (a, 0)
+
(b, 0)
×
(0, 1)= a
+
b i
また,「i
2
= −1」が得られます:
i
2
= (0, 1)
×
(0, 1) = (−1, 0) = −1