- ほとんどのひとは,複素数の実際使用と無縁です。しかし,数学教育の観点に立てば,複素数の学習は重要です。実際,複素数の学習まで進むことによって,「数と量」の本質がはじめて見えてきます。
- 自然数 → 分数 → 正負の数 → 実数,と学習を進めることは,同時に,「数と量」に対する特定の/偏ったイメージ(固定観念)を順次壊していくことです。そして複素数まで進めば,「数と量」の常識的なイメージが完璧に壊れます。あわせて,「数と量」の本質がいやでも見えてくるようになります。
- 複素数を (自然数/整数,分数/有理数,実数とあわせて)「数」と呼び,それが作用する対象をこれまで通り「量」と呼ぶとき,「数」「量」には形式の意義しか残りません ( 数使用の構造 :「位・量・数」)。 実際,「数と量」の本質は,形式です。
- こういうわけで,複素数の学習にまで進むことによって,
(1) 「数」「量」とは (存在ではなく) 形式であること,そして
(2) その形式を有するものは,逆に,すべて「数」「量」と呼ばねばならないこと
が,理解されてくるようになります。
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