商の意味 (記号「÷」の文法)  


    2数 m , nの商「n÷ m」は,「mと掛けてnになる数」の言い換え (表記) として導入されます。
    すなわち,つぎの式を満たす数「?」を「n÷ m」と書くということです:
×= n
×= n


    このように定めてよいのは,この2つの式を満たす「?」が同じになる場合です。
    自然数,分数,正負の数,複素数では,積の可換性が成り立ちますので,「?」は同じになります。 よって,商「n÷ m」を導入してよいことになります。

      注意 : 「積の可換性」は四元数になると成立しません。よってこれを「数」の条件とはしません。


    なお,「n÷ m を導入できる」ということは,「n÷ m が存在する」ということとは別問題です。 すなわち,「n ÷ m」は,存在しないこともあり得ます。──「対象化する」と「それが実際に存在する」は,別のことです。

      例えば,自然数では,「2 ÷ 3」(「3 とかけて 2 になるもの」) は存在しません。しかし,「2 ÷ 3」の対象化は,このことでは妨げられません。
      現に,「自然数では 2 ÷ 3 は存在しない」の言いまわしに,「2 ÷ 3」が対象化されています。
      ──「対象化する」と「それが実際に存在する」は,別のことです。

      比較 :「体長100m の魚」は,それが存在するかどうかと関係なく,ことばとして意味をもちます。

      「÷0」の意味


    「商」の意味 (記号「÷」の文法) は,以上述べたことですべてです。
    特に,「÷」には「分ける」といった力仕事の意味はありません。(分数や複素数の場合を考えれば,このことは簡単に了解されるでしょう。)
    「÷」に対して「分ける」を意味として感じてしまうのは,小学算数のところで「分ける問題に対して商の式を立てる」が訓練され,その中で道具 (数,商の式) とそれの応用対象 (分ける問題) を混同する習慣をつけられてしまったからです。