Up 概要 (overview) 作成: 2007-05-03
更新: 2007-05-03


    数は,量の比を表すためのものとしてつくられます。

    最初は簡単な量を扱うことからはじまります。「個数」です。 そして,「個数」を扱う数がつくられます。自然数です。

    個数の「個」の意味は,「部分を考えない」ということです。すなわち「原子」です。
    そこで,「任意に部分を考えることのできる量」を扱いたいという欲が出てきます。 そしてこれを扱う数がつくられます。分数です。

    分数は,「任意に部分を考えることのできる量」の比を,自然数2つを使って表そうとするものです。 しかし,自然数2つを使うやり方では表せない比があることに気づきます。
    そこで,このような比も扱えるように分数を拡張します。実数です。


    さてここから,扱いたい量に対する欲は,新たな方向に進みます。 すなわち,「向きをもつ量」を扱うということです。

    最初は,これの最も簡単な場合として,「正逆2方向の向きをもつ量」から入ります。 この量の比を扱うためにつくられる数が,正負の数です。

    「正逆2方向の向きをもつ量」は,<直線上の移動>に表現できます。 そこで,これの延長として,<平面上の移動>に表現できる量を扱おうということになります。 この量の比を扱うためにつくられる数が,複素数です。

    これのさらなる延長は,「<空間内の移動>に表現できる量を扱う」です。 この量の比を扱うための数をつくると,四元数というものになります。(四元数は本テキスト『いろいろな数が「数」であるとは』では取り上げません。 四元数)

    ここでいう直線,平面,空間は,数学ではそれぞれ1次元,2次元,3次元のユークリッド空間として定められるものです。したがって,正負の数以降の数の導入は,量の空間次元拡張に応ずる展開ということになります。


    以上のように,扱いたい量に応じて数がつくられます。 しかし,このように言うと,「数は人為的で,量は人為以前」のように受け取られかも知れません。
    事実はどうなのでしょう?
    量も人為です。すなわち,「ことばが<世界>を構成する」と同じ意味で,わたしたちは数を通して量を構成しています。