Up 数が量をつくる 作成: 2007-05-03
更新: 2010-12-06


    数にいろいろな種類があるのは,扱いたい量についての要求が高くなるのに応じて,それを料理できる数をつくってきた結果です。
    しかし,このように言うと,「数は人為的で,量は人為以前」のように受け取られかも知れません。
    事実はどうなのでしょう?

    量も人為です。
    すなわち,「ことばが<世界>を構成する」と同じ意味合いで,わたしたちは数を通して量を構成しています。

    実際,ちょっと反省してみれば気づくように,長さ,重さ,速さ,時間といったものは,それ自体では存在していません。わたしたちが,あるモノ・コトに対して,長さ,重さ,速さ,時間といったものを読み取っているわけです。

    その読み方を与えているのが,数です。
    「数は,量を処理する道具である以前に,量を対象として興すものである」というわけです。


    実際,数学の「量」は形式であり,数を素材にしてこの形式をつくります。
    以下この方法を示しますが,内容はきわめて専門的になります。 すなわち,数学のことばでは「普遍対象」の話になります。 くるしい人は,とばしてかまいません。
    (この内容については,つぎのテクストにあたってください:『「量」の数学』, §「量」の数学)

    先ず,形式としての「量」が,数の系 (N, +, x) に対するつぎの系として定義されます:
    ((,),×,(,,×))
    そして,「量」は,これと同型な系
    ((,), ×,(,,×))
    のことになります。 ──同型対応 f: ─→ N の条件は,つぎのようになります:
  1. 1対1対応
  2. f(x+y)=f()f()
  3. f(×)=f()×

    ちなみに,算数科の教師用語に「1と見る/1あたり量」というのがありますが,この用語を定義するとしたら,つぎのようになります:
      Qの要素aに対し,f(a) =1となる同型 f: ─→ N を立てることを,「aを1と見る/1あたり量a」という。