Up 比例関係は量になる 作成: 0000-00-00
更新: 2010-12-21


    量には,倍と和が考えられました。
    「比例関係を量と見ることができる」の意味には,「比例関係において倍と和を考えられる」が含まれています。
    さて,比例関係において倍と和は,どのように考えられるのでしょう?


    速さを例にします。
    わたしたちは,あたりまえのように,速さの倍と和を使っています:

    • 時速3km の2倍──これは,時速(3×2)km:
        [1時間に3km が対応する比例関係]の2倍は,[1時間に<3kmの2倍 >が対応する比例関係]
    • (時速 3km の動く歩道の上を時速 4kmで歩くような場面で)
      時速 3km と時速 4km の和──これは,時速(3+4)km:
        [1時間に3km が対応する比例関係]と[1時間に4km が対応する比例関係]の和は,[1時間に<3kmと4km の和>が対応する比例関係]


    「どの比例関係も量になる」を見るための別の例として,「時間と体積の間の比例関係」を取り上げてみます。
    この比例関係は,「蛇口から水を出すときの,経過時間と出た水の体積」の場面に使えます。
    そして,つぎのような計算をしています:

    • 毎秒3m3 の2倍──これは,毎秒(3×2)m3
        [1秒に3m3 が対応する比例関係]の2倍は,[1秒に<3m3の2倍 >が対応する比例関係]
    • (二つの蛇口から水をいっしょに出すような場面で)
      毎秒 3m3 と毎秒 4m3 の和──これは,毎秒(3+4)m3
        [1秒に3m3 が対応する比例関係]と[1秒に4m3 が対応する比例関係]の和は,[1秒に<3m3と4m3 の和>が対応する比例関係]


    「比例関係は量と見ることができる」の数学は,つぎのようになります:
      (N, +, ×) を数の系とする。──これから量形式 ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) を導かれる。
    ( (Q, ), ×, (N, +, ×) ),( (Q', ), ×, (N, +, ×) ) を,( (N, +), ×, (N, +, ×) ) と同型な量とする。
    QとQ' の間の比例関係全体の集合は,比例関係の間の算法+と,比例関係に対する数の倍作用 をつぎのように定義するとき,( (N, +), ×, (N, +, ×) ) と同型な量になる:
      (f+g)(x) = f(x) + g(x) (x∈Q)
      (fk)(x) = f(x)k (x∈Q, k∈N)

    実際にこの内容を手近な数学書の中にさがすならば,「線型代数」のつぎの内容がこれと対応していることになります:
      体K上の二つの線型空間V,V' に対し,VからV' への線型写像全体の集合 Hom(V, V') は,f, g∈ Hom(V, V'), k∈Kに対し f+g および fk をつぎのように定義することにより,体K上の線型空間になる:

      (f+g)(x) = f(x) + g(x) (x∈V)
      (fk)(x) = f(x)k (x∈V, k∈K)