Up 数を素材にして,量の普遍対象をつくる 作成: 2010-12-15
更新: 2010-12-16


    形というものを,どのように定義するか?
    数学では,つぎの2通りで,形を定義します:
    A.「対象Xがつぎの条件を満たすとき,Xは○○であるという。」
    B.「対象Xが対象Uと同型であるとき,Xは○○であるという。」
    A は,形を直接表現しています。
    B は,形を「ある対象Uの形」の言い方で表現しています。

    Bの場合,「対象U」を先に定義しておくことになります。 そして数学では,このときの「対象U」の在り方を「○○の普遍対象」と呼んでいます。

    数学の「量」の定義は,Bのようになります。
    すなわち,「量の普遍対象」を定義して,これに同型な系を「量」と定めます。
    このときの「量」のリアリティについては,数学は関知しません。 数学は,量の存在論を自らの埒外とします。


    量の普遍対象は,一つの数の系 (N, +, ×) に対する系 ( (N, +), ×, (N, +, ×) ) で定義されます。
    特に,数の系 (N, +, ×) のいろいろ(自然数,整数,有理数,‥‥)に応じて,量のタイプ (カテゴリー) のいろいろが導かれることになります。

    以下,このことについて,説明します。


    数学では,結局,量をつぎのカテゴリー区分で対象化していることになります:


    ただし,このうち「意味のあるカテゴリー」として実際に対象化しているのは,つぎのものです:


    そして,このカテゴリーを実現するものが,数(系) です。
    複数のカテゴリーがあるので,複数の数(系) が必要になります。
    これをつぎのようにつくっていきます──矢線の意味は「導出・拡張」:


    そして所期の<量の普遍対象>(量形式) を,つぎのようにつくります:



    (四元数については,つぎのテクストにあたってください:『四元数』)


     註 : 「( (N, +), ×, (N, +, ×) )」の話は,数学のどこにあるのか?
    線型空間論で「体K上のn次元線型空間E」を少し進んだところで,
      「Kからの線型空間Kの導出」
      「線型空間EとKの同型」
    の話が出てきますが,このときの「線型空間K」が「( (N, +), ×, (N, +, ×) )」と対応しています。
    ただし,「線型空間」と「量」は同じではありません
    自然数 (, +, ×) に対する量 ( (, +), ×, (, +, ×) ) は,線型空間ではない。
    スカラが実数の2次元実線型空間 ( (, ), ×, (, +, ×) ) は量ではない。
    一方,複素数をスカラとしたときの1次元の線型空間 ( (, ), ×, (, +, ×) ) は,( (, +), ×, (, +, ×) ) と同型なので,量である。
    等々