Up 2次元の「回転・倍」は,3次元で考えている! 作成: 2007-11-24
更新: 2007-11-24


    2次元ベクトルに対する「回転・倍」の作用は,つぎのような2次元ベクトル空間の変換 f として考えられています:

      ゼロでないベクトル v を任意にとる。
      v を (1, 0) とするように x-y 座標をとる。
      f は,f(v) = ( ax, ay ) で決まる。

    「一つのベクトルの移動先が決まれば,すべてのベクトルの移動先が決まる」ということです。 (これは,「作用」が「数」に昇格するための基本要件です。)

    ここで,「v を (1, 0) とするように x-y 座標をとる」に注意しましょう。
    「任意のベクトル v に対し,これを (1, 0 ) とする x-y 座標」が一意に決まらないと,「f は,f(v) = ( ax, ay ) で決まる」のようにできません。
    x 軸は一意に決まります。
    y 軸はどうでしょう?


    黒板に,x軸を任意の傾きで書きます。 すると,このx軸に対してy軸が決まります。 すなわち,原点を中心にして,x軸を時計の針と反対回り (左回り) に 90゜回転したのが,y 軸になります。

    この操作は,3次元に棲むことで可能になっています!
    2次元に棲んでいたら,x軸に対する y 軸を決めることができません。

    どういうこと?

    時計の針と反対回り (左回り)」は,黒板に正対するポジションをとることで言えることです。 このポジジョンは,黒板の「前と後ろ (表と裏)」を定めることのできるポジションです。 2次元の中に棲む者は,「前と後ろ (表と裏)」を定めることができません。


    以上のことを,もう少し数学的な表現を使って,まとめましょう。
    2次元ベクトル空間の変換としての「回転・倍」は,つぎのように3次元で考えています:

    1. 2次元ベクトル空間を,3次元ベクトル空間の中に2次元超平面 H として<埋め込む>。
    2. H 上に原点 O をとる。
    3. 原点を通り H に垂直に,r軸をとる。
    4. このとき,H 上に任意にとった x 軸に対し,r軸,x 軸とあわさって直交座標系をつくる y 軸が, H の中で一意的に決まる。



    <埋め込み>を数値的に扱えるように,別の言い方も示しておきます:

    1. 3次元ベクトル空間で,ベクトル q をとる。

    2. q を位置ベクトル で考えるとき, = 0 となるベクトル 全体が,q に直交する2次元超平面を形成する。

      特に,直交座標系 r-x-y を「r 軸 の上に がある」ようにとるとき,座標が ( 0, x, y ) の形のベクトル 全体が,q に直交する2次元超平面である。

    3. 2次元ベクトル空間を,つぎの要素対応により,この超平面と同一視する:
      ( x, y ) ←→ ( 0, x, y )