Up 予備知識 : 「回転」とは?  


    量として考えているものの一つに,「回転の大きさ」があります。
    「角度 (角の大きさ)」は,「回転の大きさ」のことばを使って定義されることになります。

    この「回転の大きさ」を扱うためには,その前に「回転」の意味が定まっていなければなりません。 すなわち,何に対して何をすることを「回転」というのか?ということです。

    ユークリッド空間の幾何学は,「回転」を,最終的につぎの形に還元します。

      ユークリッド空間Sの1点Oと,Oを含む有向直線Lと,Oを含みLと垂直な超平面Pと,P上の点Xに対する,Oを回転の中心とするP上のXの回転。


    Xの回転は,Lに「正の方向」を定めていることにより,「右回りどれだけ」「左回りどれだけ」で表現されます。


    ここで「超平面」ということばが出てきました。
    これについて簡単に説明します。

    3次元空間では,「空間」「平面」「直線」「点」があります。
    2次元空間だと,「平面」「直線」「点」になります。
    この調子を4次元でもやると,「全空間」「空間」「平面」「直線」「点」の5つになります。
    5次元だと,「全空間」「4次元の空間」「空間」「平面」「直線」「点」の6つです。
    この6つの表現に一貫性/連続性がないのは,3次元空間 (わたしたちが「リアルな空間」ということにしているもの) で使っている「空間」「平面」「直線」「点」のことばに縛られているからです。
    そこで,「超平面」ということばを使うことにします。
    すなわち,リアルな空間として3次元空間で使ってきた「空間」「平面」「直線」「点」を,それぞれ「3次元の超平面」「2次元の超平面」「1次元の超平面」「0次元の超平面」と呼ぶようにします。

    上の「回転」の定義に戻ると,
      Sが2次元 (「平面」) だったら,Pは「直線」
      Sが3次元 (「空間」) だったら,Pは「平面」
      Sが4次元だったら,Pは「空間」
    ということになります。


    ここで,「アレ?!」と思いませんでしたか。

    「平面Sでの,Oを回転の中心とする,P上の,Xの回転」とは,何でしょう?


    これは,「Oを中心とするP上の対称点に移るか,そのままでいるか」の2通りの操作ということになります。
    これが,「平面」における「回転」です。

    このように言うと,つぎの反論がきっと出てくるでしょう:

      平面における回転とはこういうもののはずだ!


    しかし,この絵を見ているあなたの眼は,どこにありますか?
    3次元空間の中にありますね。
    上の回転を考えているときは,暗黙に3次元空間を使っています。
    そして,Oを通って自分の眼Eに向かう有向直線を,暗黙に回転軸として使っているのです。

      実際,点Oと点Xが描かれた透明な板があなたに手渡されて,「Oを中心に,Xを右回り(反時計回り) に30゜回転せよ」と指示されたしましょう。
      あなたは,右回り(反時計回り) を決められませんから,指示された操作をすることができません。

     確認 : 平面に棲む者には,平面の裏・表を分けることはできません。
    したがって,回転の向きを決められません。