Up 小数倍の形式  


    十進数で個数を数えるとき,例えば 1234個は,

      10個の10個の10個が1つ
      10個の10個が2つ
      10個が3つ
      個が1つ

    と同じになる。 このことを転じて,

      ‥‥
      10個の10個の10個
      10個の10個
      10個

    の単位システム── 十進の単位システム──を予めつくっておいて,

      ‥‥
      10個の10個の10個がいくつ(3)
      10個の10個がいくつ(2)
      10個がいくつ(1)
      個がいくつ(0)

      (「いくつ(k)」は 0〜9)

    と数える。 このとき,

      ‥‥ [いくつ(3)] [いくつ(2)] [いくつ(1)] [いくつ(0)]

    が個数と一致する。

    「1, 2, 3, ‥‥」と一つずつ数えていくやり方と比べると,この方法は計数の労力を劇的に減らすものになっている。 これが,計数における十進数のメリットである。

     註: 十進数の意義は,計数と計算におけるメリットである。


    ここで,場面は「順序稠密量」になる。 順序稠密量が対象化され,順序稠密量の表現が課題とされる。

    離散量は,「個」という原子(部分のないもの)を考える。 この「部分がない」の制約を外して「任意に部分をとれる」にすると,順序稠密量の概念になる。 順序稠密量の「稠密」の意味は,「任意に部分をとれる」である。

    離散量では,量を「個がいくつ」で表した。 このことを,ここでつぎのように解釈する:
    (1) 量は,「もとの量の何倍」で表す。
    (2) 離散量では,「もとの量」が「個」になっていて,「何倍」が「いくつ」になっている。
    順序稠密量の場合,「もとの量」は全く恣意的に決めることになる。 これは「個」ではないので,新たに「単位」と呼ぶ。


    順序稠密量を表現するのに,十進数による個数の数え方を素直に拡張 (延長) する。 すなわち,単位からつぎの単位システムを導く:

      ‥‥
      単位の10倍の10倍の10倍
      単位の10倍の10倍
      単位の10倍
      単位
      単位の10−1
      単位の10−1倍の10−1
      単位の10−1倍の10−1倍の10−1
      ‥‥

    そして,量をつぎのように測る:

      ‥‥
      単位の10倍の10倍の10倍がいくつ(3)
      単位の10倍の10倍がいくつ(2)
      単位の10倍がいくつ(1)
      単位がいくつ(0)
      単位の10−1倍がいくつ(−1)
      単位の10−1倍の10−1倍がいくつ(−2)
      単位の10−1倍の10−1倍の10−1倍がいくつ(−3)
      ‥‥

      (「いくつ(k)」は 0〜9)

    そして,つぎを倍の表現にする:

      ‥‥ [いくつ(3)] [いくつ(2)] [いくつ(1)] [いくつ(0)] . [いくつ(−1)] [いくつ(−2)] [いくつ(−3)] ‥‥

    .」は,どれが [いくつ(0)] かを示すための記号で,「小数点」と呼ぶ。
    [いくつ] をただ並べただけでは,倍の表現が一意にならない。そこで,「小数点」のような工夫が必要になるわけである。


    例:











    この方法で表現された倍は,0〜9と小数点がつくる文字列になっている。 この文字列を「数」と定めて,「小数」と呼ぶ。
    「数」と定める根拠は,これが倍の表現になっており,そして (この後で示されるように)「数の和・積」をこれに対して定義することができるからである。

    小数による量表現は,十進数による個数表現とつぎのようにつながっている:

      単位の [いくつ(n)] ‥‥ [いくつ(1)] [いくつ(0)] . [いくつ(−1)] ‥‥ [いくつ(−m)] 倍は,
      <単位の10−m倍>の [いくつ(n)] ‥‥ [いくつ(1)] [いくつ(0)] [いくつ(−1)] ‥‥ [いくつ(−m)] 倍。

    実際,この関係を用いることで,小数の和・積の筆算法が導かれる。
    すなわち,小数の和・積は,十進数の和・積の筆算と小数点の処理を合わせる形で,求められるものになる。
    小数の算法