11.11.1 量(大きさ)表現の目的と形態の色々



 量(大きさ)の表現には目的があり,そしてその目的に適した表現形態が選ばれる。目的は色々であり,したがって表現形態も色々である。

 例えば,他者に或る量を知らせることを目的とした量表現がある。そしてこのようなもののうちには,例えば,知らせようとする量を既知の/身近な量に引き寄せて捉え易い/身近なものにする,ということがある。

 さらに,量を既知の/身近な量に引き寄せる仕方にも色々ある。既知の/身近な量への置き換えも一つであり,《既知の/身近な量いくつ分》のように表わすのも一つである(註)。そして場合によっては,既知の/身近な量に対する比較のことば──“・・・・より小さい",“・・・・よりずっと大きい”のような──だけで足りることもある。

 さらに,基準として用いている既知の/身近な量を明示しなくとも足りるような場合もある。即ち,“大きい",“小さい”のようなことばだけで済ませられるような。

 量表現には,計算にのせることを目的とするものもある。即ち“測定”である。そしてこのときには,〈読みやすさ/伝わりやすさ〉は表現の中心的な問題ではなくなる。計算上の都合が最優先される。

 量表現は,また,量を知ろうとして為されるところのものでもある。例えば,測定をこのような意義ですることがある。物の重さを知ろうとしてそれを持ち上げてみるというのも,この場合の量表現である──実際,この行為の意味は,重さを自分の感覚に表現するということである。



(註) 例えば,“その部屋の広さは,この部屋の広さくらい”のような表現と,これに対する“その部屋の広さは,この部屋の広さの3倍くらい",“その部屋の広さは 16畳”のような表現。