5.2.3.2 零を含む自然数の系



 現行では算数科のかなり早い時期に,零元としての“0"(註)を導入している。──もっとも,“無い”ことの表現として指導するわけであるが。

 零元の理論的な導入は,《自然数への加法,乗法の導入の仕方を作為して,特定の要素を零元にする》というものである。実際,加法,乗法の定義をつぎのように変更することで,先頭の自然数を零元にすることができる──この結果,“零を伴う自然数”が実現される。

 即ち,先頭の自然数を 0 と書くとき,+,×をつぎのように定義する:
x+0=x         
x+succ(y)=succ(x)+y
x×0=0         
x×succ(y)=x×y+x 

 但し,本論考では《“零”はD の零元として導入する》という立場をとる。



(註) 零元としての“0”に対しては,十進数の生成文法の要素記号としての“0”がある。記号“0”のこの混用は,“使い勝手”という観点から説明されることがらである。