6.1.2 量形式の定義,量の系
“量の系”の定義──先の要件 (A),(B) を満たすような定義──は,可換半群(Q,+)
(註1)
と数の系(N,+,×)が外算法(数の倍作用)
×
でつながっている系
((Q,+),(N,+,×),
×
)
の定義になる。そしてそれは,つぎの二通りに考えられる:
Qの要素で測定単位になるものが存在する.そして,
×
がつねに定義される.
Qの任意の要素──零元0が存在するときは,0と異なる任意の要素──が,測定単位になる.そのかわり,
×
がつねに定義されるとは限らない。
ここで,u∈Qが測定単位になるとは,任意のx∈Qに対しx=u
×
ξとなるξ∈Nが
一意的に
存在することである。(特に,Qはuで生成される。)──われわれは,“測定可能性”を量の根本規定と考える。
(i) は,((Q,+),(N,+,×),
×
)が,N∈{
,
,
,
,
+
,
,
} に対する
((N,+),(N,+,×),×)
と同型な場合である。このとき,1∈Nに対応する要素u∈Qが測定単位になる。
(ii) は,N∈{
,
,
+
,
,
}とNの下位の数の系Mに対する
((M,+),(N,+,×),×)
と同型な場合である。
われわれとしては,“量の系”を (i) によって定義するとしよう。即ち,数の系(N,+,×)に対し,系
((N,+),(N,+,×),×)
と同型な系((Q,+),(N,+,×),
×
)
(註2)
を,量の系と定める。
量の系((Q,+),(N,+,×),
×
) の含意として,つぎのことが成り立つ
(註3)
:
+は結合的かつ可換
(x
×
ξ)
×
η=x
×
(ξ×η)
x
×
1=x
Qが零元0をもつとき,0
×
ξ=0
x
×
(ξ+η)=x
×
ξ+x
×
η
(x+y)
×
ξ=x
×
ξ+y
×
ξ
x+y=x+z
y=z
x
×
ξ=x
×
ηかつx∈Q*
ξ=η
つぎの条件を満たすQの要素uが存在する:
任意のx∈Qに対し,x=u
×
ξとなるξ∈Nが一意的に存在する.
ここでQ*は,Qが零元0をもつときはQ\{0} で,そうでないときはQ自身。
なお,N∈{
,
,
+
,
,
}に対する((N,+),(N,+,×),×)と同型な((Q,+),(N,+,×),
×
)では,
(iii)
Qの任意の要素──零元0が存在するときは,0と異なる任意の要素──が,測定単位になり,かつ,
×
がつねに定義される.
となる。
x,y∈Q,ξ∈Nに対し,関係x=y
×
ξは,“xはyのξ倍”と読まれる。また,ξは“xのyに対する比”とも読まれ,x:yと記される(ただし,Qに0が存在するときはy≠0の場合)。
(註1) (Q,+)の+を,文脈から数の系(N,+,×)の+と区別すること。表記の簡便のために新しい記号を導入することはしない。
(註2) この場合の同型対応f:Q─→Nの条件は,
(1) 1対1対応
(2) f(x+y)=f(x)+f(y)
(3) f(x
×
ξ)=f(x)×ξ
(註3) 同型対応f:Q─→Nに対し,
(x+y)+z=f
-1
(f((x+y)+z))=f
-1
((f(x)+f(y))+f(z))=f
-1
(f(x)+(f(y)+f(z)))=f
-1
(f(x+(y+z)))=x+(y+z)。同様に,+は可換。
x
×
(ξ×η)=f
-1
(f(x
×
(ξ×η)))=f
-1
(f(x)×(ξ×η))=f
-1
((f(x)×ξ)×η)=f
-1
(f(x
×
ξ)×η)=f
-1
(f((x
×
ξ)
×
η))=(x
×
ξ)
×
η。
x
×
1=f
-1
(f(x
×
1))=f
-1
(f(x)×1)=f
-1
(f(x))=x。
0
×
ξ=f
-1
(f(0
×
ξ))=f
-1
(f(0)×ξ)=f
-1
(0×ξ)=f
-1
(0)=0。
x
×
(ξ+η)=f
-1
(f(x
×
(ξ+η)))=f
-1
(f(x)×(ξ+η))=f
-1
(f(x)×ξ+f(x)×η)=f
-1
(f(x
×
ξ)+f(x
×
η))=f
-1
(f(x
×
ξ+x
×
η))=x
×
ξ+x
×
η。同様に,(x+y)
×
ξ=x
×
ξ+y
×
ξ
x+y=x+z
f(x+y)=f(x+z)
f(x)+f(y)=f(x)+f(z)
f(y)=f(z)
y=z。
x∈Q* に対し,f(x)∈N*。そしてこのとき,x
×
ξ=x
×
η
f(x
×
ξ)=f(x
×
η)
f(x)×ξ=f(x)×η
ξ=η。
u=f
-1
(1) とする。任意のx∈Qに対しξ=f(x) とすると,x=f
-1
(f(x))=f
-1
(1×ξ)=f
-1
(f(u)×ξ)=f
-1
(f(u
×
ξ))=u
×
ξ。1∈N*よりu∈Q*。よって,(7)よりx=u
×
ξとなるξ∈Nは一意。