Up 確率分布 作成: 2017-08-10
更新: 2021-07-18


    事象を,標本空間Ωの部分集合として考える。
    ──即ち,{ A | A ⊂ Ω } が事象全体の集合。

    いま,{ P(A) | A ⊂ Ω } の「グラフ表現」を考えることにする。
    グラフは,<数と数の対応>のグラフが扱いやすい。
    P(A) は数であるから,Aを数値化すればよい──事象の数値化。

    「事象の数値化」は,各事象に数を対応させる関数fを一つ定めることである。
    関数fは,「1対1」を条件とする他は,任意である。
    しかし任意といっても,「後々の使い勝手」を考えて決めることになる。

    というわけで,普通は,|{ A | A ⊂ Ω }| = N に対し,fは V= {1, 2, ‥‥‥, N } あるいは V= {0, 1, ‥‥‥, Nー1} の上への写像が選ばれることになる。

     例. 「事象」が,サイコロを振って「nの目が出る」(n=1, ‥‥, 6) の場合
    fは {1, 2, ‥‥‥, 6 } の上への写像:
       f(nの目が出る) = n
    が選ばれる。

    V に対し,関数
      p:V → 区間 [0, 1]
    をつぎのように定義する:
      p(n) = P( fー1(n) )
    pのグラフが,所期の「{ P(A) | A ⊂ Ω } のグラフ表現」になる。



     例. 「サイコロ」で,関数fを
       f(nの目が出る) = n
    で定義したときは,つぎが p のグラフになる:


    「P( fー1(n) )」は,伝統的に, 「P(X=n)」と表記され,「X」を「確率変数」と呼び習わしている。
    しかし表記「P(X=n)」は,論理になっていない──デタラメな記号法である
    用語「確率変数」も,意味と合っていない──強いて呼ぶなら,「事象値変数」である。

    よって,学習者はこの記号法・用語で躓くことになる。
    翻って,この記号法・用語がわかったと言う者がいたとしたら,その者はあたまがおかしいわけである。

    ちなみに,数学の授業の「できる生徒」は,多くの場合,非論理を「慣れる」でやり過ごせる生徒のことである。
    実際,数学の授業は,本当に意味と論理にこだわり出したら全員が躓く──となるものである。


    とはいえ,伝統的なテクストの書き方をいちいち改めていくというのも,面倒である。
    よって本テクスト『確率』も,表記「P(X=n)」を用いることにする。
    読者は,「P( fー1(n) )」が「P(X=n)」と表記されているのだいうことをしっかり押さえた上で,以降を読み進められたし。