算数・数学科で主題になる“図形”の“移動”や“変形”は,アフィン写像の概念を以って定式化できます。──逆に言えば,算数・数学科は,“移動”,“変形”のうち,アフィン写像の概念に定式化できるようなものを取り上げる。
(E,D,)を2次元ユークリッド空間,(O;u,v)を正規直交基底{u,v}に対する枠,そしてX,Yをこの枠に対する二つの座標軸とします。以下,“図形”の“移動"・“変形”に対しての,アフィン写像F:E─→Eとそれに随伴する線型写像f:D─→Dによる解釈を示す。
先ず,F(O)=Oの場合の例から。
例1. Oのまわりの回転角θの回転は,fの表現行列が
例2. Oを通る直線Lに関する対称移動は,X軸に対するLの傾きがθのとき,Oのまわりの −θの回転と,X軸に関する対称移動と,Oのまわりのθの回転の合成になります。ここで,x軸に関する対称移動は,fの表現行列が
したがって,直線Lに関する対称移動は,fの表現行列が積
例3. Oを中心とする相似比κの相似拡大は,fの行列表現が
例4. 相似拡大は,X軸とY軸の両方向へのκ倍の拡大というように規定できるが,X軸方向はそのままにしてY軸方向のみをκ倍に拡大することを考えるとき,“ひずみ変換”の概念が起こる。これはfの表現行列が,
例5. 傾き1/κの直線の上にY軸をX軸に平行にずらす変換として,“ずらし変換”が定義されます。これは,fの表現行列が
算数・数学科の教材には,以上の“移動”,“変形”の他に,“平行移動”が登場します。“平行移動”の場合には,条件“F(O)=O”を外す。
例6. “平行移動”は,fが恒等写像の場合である: