キャンバスである空間の比喩として,再び“電光掲示板”を持ち出すことにしよう。
電光掲示板Xの上の“絵の変換”は,どのように特定されるのか。それは,《1. 最初オンになっている各電球Xを特定し,そして 2. Xに対応してつぎにオンになる電球X'を特定する》という形でなされます。では,電球はどのように特定されるのか。電球の位置表現の枠を固定して,この枠に対して表現することによってです。
しかし,“枠を固定する”とはどのようにすることなのか。この問題は,数学の問題ではありません。生活実践の問題です。
“枠の固定”を言うことが困難になる場面がある。実際,枠は手掛かりがなければ固定できない。空虚の中では,枠を固定できない。
枠は,手掛かりを用いて固定されます。しかし,その手掛かりは固定されているのか。手掛かりは別の新たな手掛かりによって固定される他ない。
“絵の変換”は枠の固定を前提にして考えられます。
この前提を疑うときどうなるか。“絵の変換”は,絵と枠の“相対的位置関係"──枠に対する絵の表現で規定される関係──の変化になります。そしてこのときには,“不動な枠Sに対する絵の側の変化 P─→P'”なのか,“枠自体の変化 S─→S'を含んでいる変化"(このときにはさらに,“絵も変化し枠も変化する",“絵は不動で枠が変化する”の二つの場合が考えられる)なのか,その何れとも特定できない。