Up 地図帳で考える 作成: 2018-01-14
更新: 2018-01-14


    地球の諸事の捉えは,机上でする。
    現地は,専らデータを取るところである。
    取ったデータは机上で整理し,机上で計算する。
    場所ごとの記録は,地図帳に書く。
    地球の諸事は,地図帳で考える。

    多様体を対象にする仕方も,これと同じである。
    空間は,専らデータを取るところである。
    データは,地図帳に記される。
    多様体の諸事は,地図帳で考える。

    地図帳は<現実>の幻想──記号の世界──であるが,ひとにとって対象になるものは,どんな場合も,幻想の方である。
    「多様体」の概念は,わかりにくい。そしてそのわかりにくさの根本は,地図帳こそが対象であるという構造のわかりにくさである。


     要点: 数学には,フィールドワークはない。
    数学の「空間」は,現実空間ではなくデータ空間 (情報空間) であり,しかもこれは所与空間である。
    即ち,数学は,データが所与となっているところから出発するのである。
    ──「関数 \(f: M \rightarrow \mathbb{R} \) があるとする」のように。