Up 方向ベクトルの定義 作成: 2018-01-17
更新: 2018-01-17


    \(x\in M\) における方向ベクトルは,
      「\(x\) を通る曲線 \(C\) の,\(x\) における方向ベクトル」
    として定義される。

     註: 「方向」の定義は,「曲線の方向」として定義するのみである。

    \(C\) を,パラメータ \(t\) を用いて \(C(t)\) と表す:
      \[ C : [ -\epsilon, +\epsilon] \longrightarrow M \\ C( 0 ) = x \]
     註: 曲線 \(C\) をパラメータで表すことは,必然である。
    \(C\) に関する微分を立てるときは,結局 \(C(t)\) の形を要する。

    \(C(t)\) の定義には,自由度がある。
    これは,同じコースを動く速さの自由度と対応している。
    そしてこの「運動」のイメージにしたがうとき,方向ベクトルとは速度ベクトルのことである。


    ところで,求めたいのは,「方向」である。
    しかし,求めることになるのは「方向ベクトル」である。
    なぜ「方向」ではなくて「方向ベクトル」かというと,方向をしめす形は矢印だからである。
    矢印の柄の部分をとったら,方向の表示でなくなる。

    しかし,速度が違えば異なる長さの柄を与えることになる。
    「方向ベクトル」は一意には決まらないもの,というわけである。

     註: 一意にする方法は,「正規化」である──大きさが1のものを「方向ベクトル」と決める。

    以上のことに留意して,以下,「\(x\) を通る曲線の,\(x\) における方向ベクトル」を定義していく。


    \(C\) を,\(x\) を通る曲線とする :
      \[ C : [ -\epsilon, +\epsilon] \longrightarrow M \\ C( 0 ) = x \]

    \( \phi \) を,「\( x \) を通る \(C\)」が描かれている地図の一つとする :
      \[ {\phi}(x) \in {\phi}(C) \subset {\mathbb{R}}^n \]
    また,つぎのようにおく:
      \[ {\bf x} = {\phi}(x) \\ {\bf C} = {\phi} \circ C : [ -\epsilon, +\epsilon] \longrightarrow {\mathbb{R}}^n \]
    そして,「\( x \) における \( C\) の方向ベクトル \( {\bf v}_{C,\phi} \)」をつぎのように定義する:
      \[ \begin{align*} {\bf v}_{C,\phi} &= \frac{d{\bf C}}{dt}(0) = \lim_{{\Delta t} \to 0} \frac{ {\bf C}(0 + \Delta t) - {\bf C}(0)}{\Delta t} \\ &= \lim_{{\Delta t} \to 0} \frac{ {\bf C}(\Delta t) - {\bf C}(0)}{\Delta t} \end{align*} \]

    「\( x \) における \( C\) の方向ベクトル」は,地図に依存する:

    しかし,地図 \( \phi,\, \psi \) の重複部分は,\( C^r \) 級の座標変換 \( \psi \circ \phi^{-1},\, \phi \circ \psi^{-1} \) で対応している。
    この座標変換によって,二つの地図の「\( x \) における \( C\) の方向ベクトル」構造は,同型に対応する。
    これは,「\( x \) における \( C\) の方向ベクトル」は,一つの地図の上で考えれば十分,ということを意味する。