Up リーマン多様体の地図帳 作成: 2018-01-15
更新: 2018-01-26


    リーマン多様体は,多様体である。

    「多様体」の話は,地図の話である。
    これは,場所場所で地図を好き勝手につくるという話ではない。
    地図は,同じ規準でつくられる。
    場所場所で正確につくるのである。
    しかし,地図は中心から離れたところが実際に対して歪んでくる。
    この歪みを計量的に理解しようというのが,「多様体」の話である。

    実際,「歪み」は,「<同じ規準>でつくったものの間の相対性」として考えられるものである。
    場所場所で好き勝手に地図をつくっていたら,「歪み──相対性」の論にはならない。

    多様体でつくる地図は,同じ規準でつくるものである。
    その規準は,端的に,「正規直交座標」である。
    実際,「歪み──相対性」をこれから主題化しようというとき,なぜ<規準>をわざわざ弛める必要があるか。
    「歪み──相対性」を導出できるためには,地図作成の規準は厳格でなければならない。


    リーマン多様体は,多様体である。
    そしてリーマン多様体は,つぎの条件を以て多様体の特殊である:
      リーマン多様体 \( M\) は,点 \(P\) ごとに「\(P\) 近傍地図 \(\phi_P \)」が作成されている。
      そして,\(\phi_P \) の内容は, \(P\) の変化に対してなめらかに変化する。
    ここで,「なめらか」は「\( C^r \) 級」のことばで定義される。


    \( M\) の接ベクトル空間の次元 \(n\) に対し,\(\phi_P \subset \mathbb{R}^n\) である。


    《どの点も自身の近傍地図をもつ》は,《地図は接いで使う》を含蓄する。
    そして《地図は接いで使う》は,《地図は小さい──大きいのは無駄》を含蓄する。

    リーマン多様体 \( M\) の地図帳は,そんな地図を束ねたものである。
    この「地図帳」は,超越論的な存在になる。
    実際,「リーマン多様体」は,超越論である。