Up 折れ線グラフ 作成: 2020-12-12
更新: 2020-12-12


      読売新聞, 2020-12-11
    女性の自殺 11月19%増
     11月の全国の自殺者は1798 人(速報値)で、前年同月より182人多かったことが 10日公表された厚生労働省と警察庁の集計でわかった。 自殺者数が前年同月を上回るのは5か月連続で、厚労省は「新型コロナウイルス流行の長期化で生活苦や家庭などの悩みが深刻化している」と分析する。
     11月の自殺者は男性が1169人で前年同月比8%増だったのに対し、女性は629 人で同四%増だった。 コロナ禍の中で、特に女性の自殺者の増加が目立つ。 厚労省によると、10月の20〜50歳代女性の自殺者は492人で、前年同月(243人)の2倍に急増した。 その背景として厚労省は
     ▽非正規雇用の失業者は女性の方が多い
     ▽家庭内暴力(DV)の相談件数が全国で5割増えたi
    ──などを挙げ、「コロナ禍で浮き彫りになった複数の問題が自殺増に影響している可能性がある」と分析する。
     ‥‥‥


    この記事の引用元は,厚労省「警察庁の自殺統計に基づく自殺者数の推移等 (令和2年12月10日)」であり,つぎのグラフがある:


    さて,「自殺者数の推移」の度数分布に折れ線グラフを用いるのは,数学的には間違いである。
    算数科だと「折れ線グラフの間違った使い方」の題材になる。


    「自殺者数の推移」のグラフは,折れ線グラフではなく,棒グラフになる:
    そして,この間の自殺者の総数の計算は,つぎになる:
        1581 + 1570 + 1851 + 1910 + 1849 + 2158 + 1798
        = 12717

    また,前年度のグラフを重ねるときは,つぎのように書くことになる:


    なぜ折れ線グラフはダメなのか。

    つぎが,何かの温度変化のグラフだとしよう。
    このグラフは,「○月」が「基準時刻から○か月経過した時刻」の解釈になり,そしてその間の「何月何日何時何分何秒‥‥」の温度を概数で読ませることを含んでいる。
    これが,折れ線グラフの約束である。

    「自殺者数の推移」を折れ線グラフで
    のように書けば,1500人以上の自殺者が切れ目無く発生していることになる。
    荒唐無稽である。


    ちなみに,縦軸が「人」ではなく「人/単位時間」だと,リアルなグラフではないが,まだしも意味はつく。
    時刻tの死亡者増加率 (速度) を示すグラフになるわけである。
    そして,この間の自殺者の総数の計算ができる。
    ──例えば「人/月」だと,つぎの計算になる:
      \[ \begin{align} \ \ \ \ & \int_0^{1} \bigl( \frac{ 1570 - 1581 }{ 1 } \,t + 1581\bigr) \,dt \\ & + \int_0^{1} \bigl( \frac{ 1851 - 1570 }{ 1 } \,t + 1570 \bigr) \,dt \\ & + \int_0^{1} \bigl( \frac{ 1910 - 1851 }{ 1 } \,t + 1851 \bigr) \,dt \\ & + \int_0^{1} \bigl( \frac{ 1849 - 1910 }{ 1 } \,t + 1910 \bigr) \,dt \\ & + \int_0^{1} \bigl( \frac{ 2158 - 1849 }{ 1 } \,t + 1849 \bigr) \,dt \\ & + \int_0^{1} \bigl( \frac{ 1798 - 2158 }{ 1 } \,t + 2158 \bigr) \,dt \\ \\ = \ \ & \frac{ 1570 + 1581 }{ 2 } + \frac{ 1851 + 1570 }{ 2 } + \frac{ 1910 +1851 }{ 2 } \\ & + \frac{ 1849 + 1910 }{ 2 } + \frac{ 2158 + 1849 }{ 2 } + \frac{ 1798 + 2158 }{ 2 } \\ \\ = \ \ & \frac{ 1581 }{ 2 } + 1570 + 1851 + 1910 + 1849 + 2158 + \frac{ 1798 }{ 2 } \\ \\ = \ \ & 11027.5 \end{align} \\ \]
    グラフ (度数分布グラフ)