Up 統計的仮説検定 作成: 2017-08-17
更新: 2017-08-17


    数学に「背理法」というのがある。
    これは,つぎの定理の使用である:
      命題Aに対し,
        ( A ⇒ (矛盾命題) ) ⇒ ¬A
      (「Aから矛盾が導かれるならば,Aは偽である」)

    つぎは,「( A ⇒ (矛盾命題) ) ⇒ ¬A」の特別な場合になる:
        ( A ⇒ ¬A ) ⇒ ¬A
      (「Aから ¬A が導かれるならば,Aは偽である」)
      実際,「( A ⇒ (矛盾命題) ) ⇒ ¬A」の特別な場合の
        ( A ⇒ (A ∧ ¬A) ⇒ ¬A
      で,「A ⇒ (A ∧ ¬A)」は「A ⇒ ¬A」に変形される:
        A ⇒ (A ∧ ¬A )
        ¬A ∨ (A ∧ ¬A )
        (¬A ∨ A) ∧ (¬A ∨ ¬A)
        ¬A ∨ ¬A ( ∵ ¬A ∨ A は恒真命題)
        A ⇒ ¬A

    「( A ⇒ ¬A ) ⇒ ¬A」の Aは,役回りとして「¬ 」(null) に帰されるものであるから,「帰無仮定」ということになる。


    さて,この特別な背理法「( A ⇒ ¬A ) ⇒ ¬A」に「確率」をかませると,「(統計的)仮説検定」になる:
        ( A ⇒ ほとんど ¬A ) ⇒ ¬A

    このときのAを「帰無仮説」と呼び,H0で表す。
    また,「ほとんど ¬ 」を,「有意水準 α 以下」で表す。
    「仮説検定」は,「ほとんど ¬ 」かどうかの検定である。


    このロジックを押さえるとき,「仮説検定」の枠組には<過剰>があることがわかる。
    それは,「対立仮説 H1」である。
    「¬A」に,わざわざ「対立仮説 H1」の名前を振る。
    この結果は,「対立仮説 H1」が空回りし,手順/ロジックが見えにくくなるということである。要するに,ややこしくなる。

    そして,この<ややこしさ>が,「仮説検定」信奉のもとになる。
    <ややこしさ>が,浅学の者には<もっともらしさ>に見えるわけである。

    しかも「仮説検定」は,統計アプリケーションになっているコンピュータ・ブログラムを走らせれば,結果がでる。 意味がわからなくても,結果が出る。
    また,「有意」が出ないときは,データをいろいろ操作したり,データ数を増やしてみると「有意」が出ることがある。
    これが,一部の研究分野では,研究論文作成の常態になることがある ( Douglas, H.J. (1999),  ASA (2016) )。


  • 参考文献
    • Douglas, H.J. , 1999 : 'The insignificance of statistical significance testing', The Journal ofWildlife Management, vol.63, no.3 (Jul.,1999), pp.763-772.
    • American Statistical Association (ASA), 2016 : 'American Statistical Association releases statement on statistical significance and p-values', ASA News.

  • 参考ウェブサイト