Up 「形式化・一般化・拡張」の方法論 作成: 2008-06-05
更新: 2008-06-05


    「形式化・一般化・拡張」は,科学一般の方法論である。
    そして,数学はこの方法論に関して「ぶっとんでいる」。
    空間を導入し,3次元の話を4次元に拡張し,さらにn次元に一般化するといったことを,あたりまえにやる。

    形式化・一般化・拡張は,もとの意味を見えなくする。
    形式化・一般化・拡張の意義が単に「特殊の反復を無くす省力化」であれば,<省力化する>と<意味を犠牲にする>は釣り合いがとれない。 ──<意味を犠牲にする>の方が,はるかに重いのである。

    形式化・一般化・拡張の意義は,つぎのことに尽きる:

      それ自体では見えなかった本質が,
      形式化・一般化・拡張によって見えるようになる。

    例えば,「数」の意味は,自然数で考えても出てこない。 分数,正負の数,複素数へと拡張し,そしてさらに四元数へと拡張するくらいまでやって,見えてくる。


    ひとは,他人も自分だと思う。
    いまの自分がわかる教え方は,他人もわかる教え方だと思う。
    そこで,数学専門でやってきた者は,学生に対し最初から<形式化・一般化・拡張された形>を授業する。
    学生は,第一回目の授業で死んでしまう。

      経験を積むことによって,他人は自分とは違うということがわかってくる。──経験が少ないうちは,他人が自分とは違うということがわからない。
      経験を積むことによって,「学生はほんとうにアタマ・カラダの不自由なものだ」ということがわかってくる。──経験が少ないうちは,「学生はほんとうにアタマ・カラダの不自由なものだ」ということがわからない。

    学生は,無意味な記号の飛び交う世界を,授業として過ごしてきた。
    いまこの学生にたずねてみる:

      科目○○では何を勉強したのか?
      ──学生:△△を勉強した。
      △△とは何か? なぜ△△か?
      ──学生:‥‥ (わからない)

    △△が基本中の基本であるほど,主要中の主要であるほど,学生は答えられない。