Up <一般>から始めるのはダメ 作成: 2008-06-05
更新: 2008-06-05


    <一般>から始めるのはダメである。
    授業は,「意味を教える・意味を考えさせる」をしなければならない。そして,意味は<卑近>にある。


    例 :「行列」
    線型代数幾何として線型変換をやるときは,「合同」の意味の同型,「相似」の意味の同型,そしてそのつぎにくるべき同型として,導入することになる。これは,2次元でやる。
    「同型の点対応」から線型変換 (線型写像) が出てきて,さらにこれの表現として4つの数 (「行列」) が使えるということが出てくる。 そして,点対応の計算公式を導く,と続く。

    以上の同型は,「自分の目線に対して平面図をどう置いたらどう見えるか」という話である。
    平面図を傾けていったら,直線になってしまうときがある。 ここに,「退化」の概念が自ずと出てくる。

    線型変換を実際に練習して,カラダに馴染んできたところで,固有値の話などを入れてもよい。 これは,基底の取り方を工夫すれば,相似変換に近い線型変換をつくれる場合があるという話である。

    2次元のつぎは,3次元。
    3次元をやる意義の一つ:3次元までいかないと「退化」の一般形式 (超平面への退化) が見えてこない。
    そして3次元をやって,はじめて一般次元の話になる。

    「行列」という主題が何なのかがわかるためには,これくらいのステップを踏まねばならない。──それくらい,学生のアタマ・カラダは不自由なものである。


    例 :「曲面・接平面・偏微分」
    つぎのことを学生にわからせるには,図や実際例を多用する相当ていねいな授業が必要になる。──それくらい,学生のアタマ・カラダは不自由なものである。

    1. 曲線 f(x) で,「なめらか」「局所的に直線 (接線)」「微分可能」を同じこととして関係づける
    2. 曲線 f(x) の次元拡張として曲面 f(x, y) を理解する
    3. 「局所的に直線 (接線)」の次元拡張として「局所的に平面 (接平面)」を発想する
    4. 接平面が x, y 軸方向の接線で生成 (generate) されるという直観
    5. そのために,偏微分のアイデアが当然出てくるということ