Up 実習生の授業の傾向とその理由 作成: 2010-10-23
更新: 2010-10-24


    1. やかましい授業をする

    実習生の授業はやたらやかましい。
    無駄が多く,そして肝心なことをしない。
    授業は小道具満載で,それらは授業が終わった途端にただゴミの山になるものである。

    どうしてこうなるのか?

    実習生にはつぎの思いがある:
      生徒の顔がニコニコしていないのは,ダメ。
      生徒の目が活き活きと輝いていないのは,ダメ。
    ここに大きな思い違いがある。

    勉強しているときの顔は,ニコニコしていない。
    勉強しているときの目は,活き活きと輝いてはいない。
    生徒がほんとうに勉強しているときの表情は,沈鬱で重いのである。

    実習生が考える「よい授業での生徒の表情」は,これの真逆になる。
    よって,実習から大学に戻ってきた学生が,自分の教育実習を振り返り,「あの授業はうまくいった」「あの授業は失敗した」「最初のうち授業がうまくいかなかったが,だんだんとうまくできるようになった」を言うとき,その「うまくいった・うまくいかなかった」はまるで逆なのかも知れない。


    実習生の「よい授業での生徒の表情」の思いは,どこでつくられたのか?
    大学でこれが教えられているということがある。
    そして,実習校で強化されているということがある。

    「大学でこれが教えられている」とは,大学で「生徒の興味関心」が変に教えられているということである。
    「生徒の興味関心」とは,正しくはどういうことか?
    生徒の興味関心を引き起こすものは,学習主題がもっている力である。 この力をそのまま用いることが,生徒の興味関心を引き起こすということである。 主題の力をそのまま用いることが,教師のすることである。
    これに対し実習生は,「主題の力」を捉えられず,そしてそもそもこの概念をもっていないので,生徒の興味関心を惹くとはキャラクターの絵や実物を小道具に使ったりゲームをやったりすることだと思うのである。

    「実習校で強化されている」とは,現職教員といっても実習生と同じ教育観・授業観・価値観をもつ者が多くなっているということである。 実習生の「授業は生徒をのせてナンボ,気を惹いてナンボ」の思いは,実習校で強化されることはあっても,そこでダメ出しされることはない。
    学生は,思い違いをしたまま大学を卒業し,教員になり,今度は実習生を指導する。


    2. 生徒を子ども扱いする

    実習生は,授業で生徒をやたら子ども扱いする。
    どうしてこうなるのか?
    生徒のことを,子ども扱いしなければならないものと思っているからである。

    実際,生徒に対する子ども扱いは,社会全般の傾向である。
    学校現場も同じであり,またこの傾向を助長する場になっている。

    教師から子ども扱いされているので,授業の中で生徒は幼稚である。
    小学生上級でも幼稚であり,中学生でも幼稚である。

    実際には,熟練した教師の授業は,小学一年生でもきりっとひきしまった顔になる。 文字通り,大人しくなる。
    しかし,このことを教え,そして身をもって教えることのできる教員が,学校現場から少なくなっている。


    参考

      授業NG集