Up 「足し算」 作成: 2014-01-21
更新: 2014-01-21


    「足し算」の授業を「数学を養う」として行うとき,それはどのようなものになるか?

    「足し算」の授業で生徒に養う数学は,主につぎの4つである:
      1. 「和」の概念
      2. 求和アルゴリズム
      3. 記号「+」の用法
      4. 記号「=」の用法 (「相等」の概念)
    授業は,これを小学生仕様でやっていく。

    ここでは,「求和アルゴリズム」の授業の流れを示す。

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    (授業の主題の提示)

    T. 始めます。

    T. いつものように,きょう勉強することを,さいしょに言います。

    T. アヒルが,こっちの池に5わ,こっちの池に3わいる。
     あわせて何わ?ときいたら,みんなはもちろん答えられるね。
      C. 8わ
    T. どうやって「8わ」を求めた
      C. (「数える」に類する答えを返す)

    T. きょうは,「あわせていくつ」をかぞえないで求める方法を,勉強します。
    T. 「かぞえないで求める方法」とは,「計算で求める」です。
      (板書)「あわせていくつを,けいさんでもとめる」

     註 : 授業者の主題のとらえは,主題提示の板書のことばで試される。

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    (既習の押さえ)

    T. またいつものことですが,きょうの勉強をするためにわかっていなければならないことを,押さえます。

    T. みんな,1, 2, 3, 4, ‥‥ と唱えて,100まで言えるね?
      C. 言える

     註 : 「唱える」のことばを使えるようにしておく。 「数える」のことばは,「個数を数える」の「数える」と紛れるからである。

    T. だったら,OK。
     必要なのは,これだけ。
      C. (拍子抜け,安堵を返す)

    (以上が「導入」と称している部分,以下「展開」と称する本題の部分に入る)

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    (課題提示)

    T. あひるの問題をそのまま使います。
      数えないで「あわせていくつ」を求める方法を,みんなに考えてもらう。

     註 : 「展開」部は,「課題解決」型に構成するのがよい。 「自分で考える・作業する」を生徒にしぜんにやらせることができるからである。

    T. つい数えるをやってしまわないように,5と3の数だけ書いて,これを出発にします。
      (「5」と「3」を横に並べて書く)

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    (課題解決)

    T. みんなに考えてもらうって言ったけど,これを全部自分で考え出せたらたいしたもの。
      ペアノという大数学者が考えついたものだから。
    (「ペアノ」を板書)
      C. エー

    T. だから,ヒントを出します。
      3わの池のアヒルを1わ,5わの池に移してやる。
      (「5 3」の板書に対し,指で「移動」をパフォーマンス)
      どうなる?
      C. 6わと2わになる。

    T. 6わと2わになったから,5と3の下に,6と2を書きます。
    T. これでヒントはおしまい。
    T. この後は,自分で考える
      いつもの先生の言い方だけど,ジタバタしなさい。

    T. さあ,どうでしょう。
      あわせて8わの「8」を,出せた?
      C. 出せた。
      C. 1わずつ移して,数を書いていくと,8が出てくる。

    T. 「残念ながらできなかった」というひとは?
      いないね。

    T. じゃあ,代表してだれかに前に出てやってもらおうか。
      (一人を指名)
      C. (板書)
        5 3
        6 2
        7 1
        8 0

     註 : 「0わ」のように「0」を用いることを,既習にしていること。

    T. 出たね。
    T. ところで,「これって計算か?」と思った人,いるかな?
      あ,いるね。
      でも,数学ではこれも「計算」です。

    T. というわけで,みんなはペアノ大数学者の方法を,みごと見つけました。
      これは,自分を大いに褒めてやっていいぞ。

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    (練習)

    T. さて,授業は,残りの時間,何をすることになるでしょう?
      C. 練習。

    T. はい,よくできました。
      いつも言ってるけど,「わかった・できた」はゴールじゃない。
     「身につける」がゴール。
     「わかった・できた」を信用しちゃあいけない。
      ということで,身につけるための練習に行くぞ。


    T. (板書)
      「りんご8こと5こ,あわせてなんこ?」
      「木が4本と7本,あわせてなん本?」
      「ハチが 28 匹と13 匹,あわせてなん匹?」
      C. (作業)

     註 : 「28 と13の和」は,現行だと「2位数」「位上がり」の話になって,まだ先の内容になる。
    一方,「和のアルゴリズム」を主題とするこの授業は,「28 と13 の和」をしぜんに扱うものになる。

    (以上で「展開」部が終了。以下は「まとめ」と称している部分)

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    (まとめ)

    T. では,きょう勉強したことをまとめます。
      きょうは,「あわせていくつ」を計算で求めるやり方を勉強しました。
      (練習問題の解答を使って)
      1つずつ,片方を増やし,片方を減らす。
      片方が0になったときのもう片方が,「あわせていくつ」の「いくつ」。
      (板書)
      「1つずつ,かた方をへらし,べつのかた方をふやす。
      かた方が0になったとき,べつのかた方があわせたかずになる。

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    (振り返り)

    T. 最後に,きょうの授業で,みんながどこからどこまできたか,確かめます。
    T. きょうの勉強で必要だったのは,「1, 2, 3, ‥‥」って唱えられること。
      そして,「あわせていくつ」を計算で出せるところまできました。
      (板書)

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    (次時の内容の予告)

    T. さて,つぎの時間は何をするかですが ‥‥
      つぎの時間は,きょうできるようになったことを使って,
      (板書)「たしざん九九」
      というものをつくってもらいます。

    T. それでは,終わります。