Up 「平均」 作成: 2014-01-25
更新: 2014-01-25


    算数の「平均」は,数学の「微分積分」の内容になる。

    「微分積分」は,2つの順序稠密量の間の関数から,論を開始する。
    例えば,「速さ」が,<時間>と<距離>の間の関数として,素材になる。

    「平均」は,2つの離散量の間の関数から,論を開始する。
    例えば「得点力」が,「試合ごとの集計」の形で,<試合数>と<得点>の関数として,素材になる。

    「試合ごとの集計」には,2タイプの記述法が立つ。
    「この試合終了までで累積何点」と「この試合は何点」である。
    二つの記述は,互いに他から導ける。
    前者から後者を導くのが,「微分法」である。
    そして,後者から前者を導くのが,「積分法」である。

    つぎに,二つのチームA,Bの得点力の比較を,主題にする。
    比較の方法は,A,Bそれぞれで,集計データを「試合数−累積点数」の積分グラフに表し,そしてこのパターンをつぎのように繰り返し書き連ねてみることである:
(折れ線グラフにすると,見やすい)
    一種の「大数の法則」がはたらいて,グラフは全体で「斜め一直線」に見えるものになる。
    そして,A,Bそれぞれのグラフを比較してみる。
    直線の傾きの緩急が,得点力の高低に対応する。

    「斜め一直線」の微分は,「横一直線」である。
    そしてこの「横一直線」のレベルの高低が,得点力の高低に対応する。

    では,「斜め一直線」「横一直線」を導く操作はあるか?
    これが「平均」である。
    算数の「平均」の数学的位置づけは,以上のようになる。

    つぎに,「傾き」「レベル」の読み方を,主題にする。
    「傾き」「レベル」は,「平均」したときの「1試合の点数」と一致している。
    「1試合の点数」を,「単位あたり量」のことばで一般化する。
    こうして,「平均」に「単位あたり量」がつながる。

    ただし,注意すべきこととして,「平均」は「単位あたり量」を用いるが,「単位あたり量」の概念は「平均」の概念を必要とするものではない。
    これは,「比例関係」の概念が「平均」の概念を必要とするものではないのと,同じことである。

    ここでは,「「平均」の導入」の授業を示す。

    ────────────────────────────────
    (授業の主題の提示)

    T. 始めます。

    T. きょう勉強することは,これです。
      (板書)
      「平均」。

    ────────────────────────────────
    (既習の押さえ)

    T. いまみんながどこまで来ているか,確認します。

    T. 前の授業では,(板書)「これまでとは違う量」を考えることになりました。
      どんな量でしたっけ?
      言い表し方も,練習しましたね。
      C. 「2量が関係する量」
    T. 全部で何回唱えたっけ?
      C. 50回 (;;)

     註 : ことばを身につけるのは,漢字を身につけるのと同じで,繰り返ししかない。


    T. 「2量が関係する量」として,何を考えましたか?
      C. 「得点力」──「試合数と得点」
      C. 「卵のとれ高」──「日数と個数」

    T. だいじょうぶだね。
      そして授業の最後に,「得点力の高い・低いを,どうきめたらよいか?」をつぎの授業で考えると,予告しました。
      それでは,今日の授業に入ります。

    (以上が「導入」と称している部分,以下「展開」と称する本題の部分に入る)

    ────────────────────────────────
    (課題提示)

    T. (板書) AチームとBチームは,どちらが得点力が高いといえるか?
      (得点データの提示)

    ────────────────────────────────
    (課題解決)

    T. どうぞ,解決してください。

      C. (作業)

    T. どうなりました?

      C. 試合数が違うから,試合数をそろえてみる。
        Aは5試合で15点,Bは6試合24点
        Aは30試合で90点,Bは30試合120点
        Bチームの方が得点力が高い。
      C. 得点を全部足して試合数で割る。
        1試合の得点がでるので,これで比べる。
        Aは1試合で3点,Bは1試合4点
        Bチームの方が得点力が高い。

    T. 2つの考え方が出てきたけど,これで解決?
      C. 解決。

    T. 2つの考え方は,別々の考え方?
      C. ‥‥

    T. 2つの考え方の関係が見られるように,これから作業してもらいます。
      A,B両方のチームで,試合ごとの得点積み上げのグラフを作成する。
      グラフは,折れ線グラフに。
      データ分を書いたら,これを繰り返す。
      (説明)

    T. やること,わかった?
      C. わかった。
    T. では,作業開始。
      C. (作業)

    T. さあ,どうだろう。
      C. Bの方が上になる。
    T. 「試合数をそろえてみると,Bの方が得点が上」は,グラフに現れている?
      C. 現れている。
    T. 「Aは1試合で3点,Bは1試合4点」は,グラフに現れている?
      C. 現れていない。

    T. グラフ全体の形を見るために遠ざけて見ると,どんなふうに見える。
      C. 直線に見える。
    T. その直線を引いてごらん。
    T. 「Bの方が上になる」は,どう言い換えられる?
      C. 「傾きが大きい」。

    T. で,いよいよ今日の授業の核心に近づいてきたんだけど,この傾きを言い表すとどうなるかな?
      C. (作業)

     註 : 「傾き」の表現が既習になっていることが,必要。

    T. どうでしょう。
      C. Aは5試合で15点,Bは6試合24点。
        だから,Aは1試合で3点,Bは1試合4点。
    T. グラフのここに,「Aは1試合で3点,Bは1試合4点」が現れているね。

    T. 計算では,全得点を試合数で割るをやって,「Aは1試合で3点,Bは1試合4点」を出した。
      計算とグラフの両方で,「Aは1試合で3点,Bは1試合4点」を出したけど,これを(授業の主題として板書した「平均」を指さして)「平均」を求めると言います。
      どうして「平均」ということばになるのかは,つぎの時間に勉強します。

    ────────────────────────────────
    (練習)

    T. 今日は,まだ内容が途中なので,練習としてすることは無し。

    ────────────────────────────────
    (まとめ)

    T. では,きょう勉強したことをまとめます。
      きょうは,得点力を比べることをやりました。
      得点力は,「2量が関係する量」です。
      その2量は,試合数と得点。
      そして「1試合の得点で比べる」という方法に到達しました。
        (板書)
        得点力を比べる:1試合の得点で比べる

    T. また「1試合の得点」を求めることを,「平均」を求めると言います。
        (板書)
        得点力を比べる:1試合の得点で比べる
                     ↑
                    平均

    ────────────────────────────────
    (振り返り)

    T. 最後に,きょうの授業で,みんながどこからどこまできたか,確かめます。
    T. きょうの勉強で必要だったのは,「2量が関係する量」として「得点力」を考えられること。
      そして,得点力を比べられるところまできました。
      これは,「2量が関係する量」を比べられるところまできた,ということです。
      (板書)

    ────────────────────────────────
    (次時の内容の予告)

    T. つぎの時間は,「平均」のことばの意味をやります。

    T. それでは,終わります。