Up 「比例関係」 作成: 2014-01-22
更新: 2014-01-23


    人が「一定」と表現するものを,数学にする。 「比例関係」は,こうしてつくられる数学の一つである。 「比例関係」の授業は,この内容を授業する。 即ち,つぎの内容の授業になる:

    1 「一定」
    例えば,水流
    これに,「流れ一定」のものとそうでないものを見る。
    「流れ一定」を分析・構造化する。
    「時間が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,体積が 2, 3, ‥‥ 倍になる」の表現に到達する。

    2 「比例関係」
    つぎに,表現「時間が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,体積が 2, 3, ‥‥ 倍になる」を,これの「時間」「体積」のところを変項 (variable,「変数」) にして,一般化する:
      「2量の間の関係で,
       一方が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,もう一方が 2, 3, ‥‥ 倍になる」

    2量に「時間」と「距離」をとれば,運動する物体の「速さ一定」の表現になる。
    2量に「体積」と「重さ」をとれば,物の「均質」の表現になる。
    そこで,「2量の間の関係で,一方が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,もう一方が 2, 3, ‥‥ 倍になる」は重要な形式だということで,これに名前を与える。 ──「比例関係」である。

    3 「一定」(「比例関係」) の個別表現
    「流れ一定」の水流は,チョロチョロの流れから大河の流れまで,多様・無限にある。
    そこで,これらを区別する表現をつくることにする。
    そして,「この時間にこの体積」の表現に到達する。
    即ち,つぎのようになる:
      一つの<「流れ一定」の水流>に対し,「この時間にこの体積」の対応を捉える。
      対応する時間と体積のペア全体──集合Pとする──は,無限集合になる。
      即ち,時間と体積のペア (t, v)がPに属するとき,Pはtのn倍とvのn倍のペア全体になっている。
      しかしこのことは,同時に,「Pの要素一つを示すことがP全体を示すことになる」を意味する。
      ここに,「5デシリットル/秒」タイプの表現の導入になる。

    4 「比例定数」
    「この時間にこの体積」の「この時間」と「この体積」は,実際には,時間の単位の何倍,体積の単位の何倍で表すことになる。
    このとき,時間の単位と体積の単位をそれぞれ一つに固定し (例えば,秒と cm3 ),「この時間にこの体積」の対応から数値と数値の対応を導いてみる。
    そして,この数と数の対応に何かきまりが見出されないか,と考える。
    このとき,「一定数倍」のきまりに到達する。
    即ち,秒の単位に対応する体積が acm3 であるとき,数と数の対応は「a倍」になっている。
    定数aを,「比例定数」と呼ぶ。


    ここでは,「「一定」(「比例関係」) の個別表現」の授業を示す。

    ────────────────────────────────
    (授業の主題の提示)

    T. 始めます。

    T. きょう勉強することは,これです。
      (板書)
      いろいろな「流れ一定」がある。
      互いに区別できる名前をつくろう。

     註 : 授業者の主題のとらえは,主題提示の板書のことばで試される。

    ────────────────────────────────
    (既習の押さえ)

    T. いまみんながどこまで来ているか,確認します。

    T. 前々の授業では,いろいろな「流れ一定」を観察しました。
      そのいろいろを言い表すのに,「勢いが強い・弱い」「流れが太い・細い」の言い方をしました。。
      それから,「流れ一定」って,どんなきまりだろうと考えました。
      そして,そのきまりを求めてしまうところまで行っちゃいました。

    T. きまりのことばは,けっこう複雑で言いにくかったね。
      それで,何回も唱えて身につけるようにしました。
      全部で何回唱えたっけ?
      C. 50回 (;;)

     註 : 「数学を養う」は,「身につける」については,体裁を考えない。
    「元気を養う」では,これは「暗記」と称され,下の下の指導法と位置づけられるものである。

    T. そして前回の授業では,「比例関係」が出てきました。
      これは,「流れ一定」の一般化でした。

    T. そして「比例関係」の意味の言い方を,何回も唱えて身につけるようにしました。
      全部で何回唱えたっけ?
      C. 50回 (;;)

    T. つぎの授業の最初に唱えるぞ,って予告したね。
      では,言ってみよう。
      C. 「2量の間の関係で,一方が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,もう一方が 2, 3, ‥‥ 倍になる」

    T. 「流れ一定」だと,これはどういう言い方になるの?
      C. 「時間が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,体積が 2, 3, ‥‥ 倍になる」

    T. だいじょうぶだね。
      これが,今日の勉強に必要なものぜんぶ。

    (以上が「導入」と称している部分,以下「展開」と称する本題の部分に入る)

    ────────────────────────────────
    (課題提示)

    T. (水道の3つの蛇口から水を出して,3つの「流れ一定」をつくる。)
      ここに,3つの「流れ一定」があります。
      それぞれ「流れ一定」ということで,いいね。
      本日の課題は,この3つに,互いに区別できる名前をつけようというわけです。

    ────────────────────────────────
    (課題解決)

    T. この問題は,実はとっかかりが難しいんだわ。
      というわけで,そのとっかかりを先生がつくります。

    T. ストップウォッチと,1リットルビーカーを用意しました。
      みんなに何をさせようというのでしょう^^

      C. 同じ時間にたまる水の量を測る
      C. たまる量が違ってくる。

    T. では,どうぞ。
      C. (作業)

    T. さすが,きちんと記録つけてるね。
      時間を変えたりもしているね。
      では,報告してもらいましょう。
      C. (報告)

    T. さあ,どうだろう。
      名前を考えるとっかかりになった?
      C. たぶん,「10秒で2デシリットル」とか言わせたいんだ。
      C. そうそう

    T. では,命名してください。
      C. 「10秒で1.2デシリットル」「10秒で2.3デシリットル」「10秒で4.5デシリットル」

    T. あら,できちゃったね。
      だけど,時間を変えて測ったりもしたね。
      「10秒で1.2デシリットル」の流れは,他にはどんな名前になる?
      C. 「5秒で0.6デシリットル」
      C. 「20秒で2.4デシリットル」

    T. 「10秒で1.2デシリットル」「5秒で0.6デシリットル」「20秒で2.4デシリットル」は,同じ流れを指す名前になってないとまずいぞ。
      だいじょうぶ?
      まずいかだいじょうぶか,考えて。

      C. だいじょうぶ。
      C. 「10秒で1.2デシリットル」は,「5秒で0.6デシリットル」「20秒で2.4デシリットル」。
      C. どれで言っても同じことになる。

    T. 「10秒で○デシリットル」だと,測らなくても「5秒で0.6デシリットル」「20秒で2.4デシリットル」になるということ?
      C. そう。
      C. 「時間が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,体積が 2, 3, ‥‥ 倍になる」

    T. じゃあ,実際に測らなくても名前をつくれるということを,やってみますか。
      第4の流れとして「3秒で6デシリットル」を考えます。
      計算を簡単にするために,数値を簡単にしました。
      名前の候補を20個,つくってください。
      C. (作業) (;;)

    T. その中で,いちばん使いやすそうな名前といったら,どれになりそう?
      C. 「1秒で 2デシリットル」。

    T. 実はこれで,本日の授業のゴールに来ちゃいました。
      生活では,時間の方を単位にした名前を使うのが,慣習になっています。
      このとき「1秒で2デシリットル」は (板書)「2デシリットル/秒」のように書くんだけど,これについてはまた後の授業で。

    ────────────────────────────────
    (練習)

    T. 今日は,「第4の流れ」で練習を兼ねたから,特に練習は無し。

    ────────────────────────────────
    (まとめ)

    T. では,きょう勉強したことをまとめます。
      きょうは,いろいろな「流れ一定」に対して,互いに区別できる名前をつくることをやりました。
      名前の形は,「時間に体積を対応させる」でした。
      (板書)
      「流れ一定」に名前をつける:「時間に体積を対応させる」

    ────────────────────────────────
    (振り返り)

    T. 最後に,きょうの授業で,みんながどこからどこまできたか,確かめます。
    T. きょうの勉強で必要だったのは,「流れ一定」を「時間が 2, 3, ‥‥ 倍になるとき,体積が 2, 3, ‥‥ 倍になる」に言い表せること。
      そして,「流れ一定」に名前をつけるところまできました。
      名前のつけ方は,「時間に体積を対応させる」です。
      (板書)

    ────────────────────────────────
    (次時の内容の予告)

    T. さて,つぎの時間は何をするかですが ‥‥
      「流れ一定」は,比例関係の一つでした。
      そこでつぎは,他の比例関係についても,今日やったのと同じことをやってみることにします。
      例えば,車の速さに名前をつけるとか,です。

    T. それでは,終わります。