Up 「重さ」 作成: 2014-01-26
更新: 2014-01-26


    算数が扱う量は,つぎのものである:
    1. 離散量
        「個数」一般
    2. 順序稠密量
      1. 単一
        1. 数学的対象の測度に還元される量 (数学の対象になる量)
            「長さ」「面積」「体積」(「かさ」)「角度」
        2. 数学的対象の測度に還元されない量 (数学の対象にならない量)
            「重さ」「時間」
      2. 比例関係
          「速さ」
          「密度」一般 (「混み具合」「生産性」「得点力」等々)

    ここで「数学的対象の測度に還元される」とは,例えば「長さ」なら,数学的対象である「2点間の距離」に還元されるということである。 ──特に,「長さ」を内包する数学的対象の絵 (「線分」) を描くことができる。

    これに対し「重さ」「時間」は,なにかの数学的対象の測度という内容にできない。
    これは,《「重さ」「時間」は,算数の授業においては絵をもたない》ということである。

    また,数学的対象の測度に還元される量では,測度や計算の前処理として「測度・計算に都合よいように数学的に整形」を考えられることになり,実際,算数の主題になる。 ──「等積変形」と呼んでいるのが,これである。
    一方,「重さ」「時間」では,「整形」はない。

    「重さ」「時間」は,数学的対象の絵をもたないために,専ら具体物の上で「量」の論をやっていくことになる。
    こういうわけで,「重さ」「時間」は授業がやりにくい。
    例えば,「重さを長さに表現する (視覚化する)」の装いで「重さと長さの同型」を扱おうとして,「バネに物をぶら下げる」を使おうとする。 しかしこれは,素材の限界から,うまくはいかない。(例えば「重さを2倍にしたら伸びも2倍」をやりたいところだが,一定範囲内の重さにしか使えない──等々。)
    もっともここは,「やりにくい」と思うよりは,「もともとそんなものだ」と思うところである。

    一般に,量「○○」の単元構成はつぎのようになる:
○○は,大小が考えられる──○○は「量」のなかま
  ↓
○○を表す/測る──単位を決めて,「単位がいくつ」に
  ↓
○○比較──測定値の数の大小比較で,できる
  ↓
○○の和──測定値の数の和で,求められる
  ↓
共有単位──公の単位
  ↓
その他
    「重さ」も,この順番を踏む。


    ここでは,「量「重さ」の導入」の授業を示す。

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    (授業の主題の提示──課題提示を兼ねる)

    T. 始めます。

    T. 今日から,「重さ」の勉強に入ります。

    T. きょう勉強することは,これです。
      (板書)
          重さは「‥‥」だ。
     「‥‥」に,なにかことばを入ります。

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    (既習の押さえ)

    T. 授業ではいつも,きょうの勉強に必要な既習の確認をしています。
      これは,きょうの勉強の中身として,後からやります。


     註 : 「数学を養う」では,「既習」のことばは,低学年から使えるものにしておく。 即ち,「「これまで勉強してきていること」を「既習」と言います」の指導を,低学年でやってしまう。

    (以上が「導入」と称している部分,以下「展開」と称する本題の部分に入る)

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    (課題解決)

    T. ここに,同じ大きさの缶があります。
      もってもらいましょう。
      (生徒に手渡して)
      どう?
      C. こっちが重い。
    T. で,こっちが‥‥
      C. 軽い。

    T. (数人に試させる)
    T. みんな,こっちが重くて,こっちが軽いって。

    T. いま「重い・軽い」が出てきたけど,前にこんなのやったね。
      (右手左手で,親指と人差指の違う開きをパフォーマンス)
      C. 長い・短い。
    T. 長い・短いの大きさのことを,何て言った?
      C. 長さ。
    T. そして,(板書)長さは「‥‥」
      C. 量!

     註 : 「数学を養う」では,「量」のことばは,低学年から使えるものにしておく。 即ち,「「大きさ」のことを,数学のことばで「量」と言います」の指導を,低学年でやってしまう。

    T. これまで,どんな「量」をやってきていますか?
      C. 長さ,広さ,かさ,時間
    T. これに,今回「重さ」が加わります。
      5番目の「量」として,これから「重さ」を勉強していきます。

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    (「量」の概念を確認する趣で,これから勉強する内容を紹介)

    T. 今日は「重さ」の最初の授業なので,これから「重さ」で勉強していくことを話します。

    T. 「長さ」では,どんなことを勉強しました?
      C. 長さを表す/測る──単位を決めて,「単位がいくつ」に。
      C. 長さを比べる──測った値で比べられる。
      C. 長さを足す──測定値を足して,求められる。
      C. 長さの共通の単位──「cm, m, km」。

    T. 「かさ」「時間」でも,同じことをした。
      「広さ」は,広さくらべを簡単にやっただけで,まだ「単位」まで行っていない。 だけど,4年生になってから,同じことをします。
      そして今回は,「重さ」で同じことをします。

    T. 《長さを表す/測る──単位を決めて,「単位がいくつ」》と同じだから‥‥
      C. 重さを表す/測る──単位を決めて,「単位がいくつ」に。
    T. 《長さを比べる──測った値で比べられる》と同じだから‥‥
      C. 重さを比べる──測った値で比べられる。
    T. 《長さを足す──測定値を足して,求められる》と同じだから‥‥
      C. 重さを足す──測定値を足して,求められる。
    T. 《長さの共通の単位》と同じだから‥‥
      C. 重さの共通の単位
    T. そういうこと。

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    (まとめ)

    T. では,きょう勉強したことをまとめます。
      きょうは,「重さ」は「量」だということを,かくにんしました。
      そして,「重さ」の勉強としてこれからすることを,あたまに入れてもらいました。

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    (振り返り)

    T. 最後に,きょうの授業で,みんながどこからどこにきたか,確かめます。

    T. 「量」は,これまで,長さ,広さ,かさ,時間を勉強してきています。
      ということで,「重さ」は,5番目の「量」になります。
      「重さ」の勉強はこれからということで,今日は「重さ」との出会いです。
      (板書)

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    (次時の内容の予告)

    T. きょうは重さを手で持って比べただけだったけど,つぎの時間は,なにか道具を使って重さを比べる方法がないか,考えてみます。

    T. それでは,終わります。