Up 数学のことばを使えない 作成: 2014-01-29
更新: 2014-02-09


    「数学」は,「表現者」である。
    ものを捉えるのに,上手と下手がある。
    上手を追求するのが,学問である。
    数学は,この意味の学問の一つである。

    《東の山の木2本と西の山の木3本,あわせて5本。》
     ──この事態をどう表現するか?
    《紙に書いた「2」は,遠ざけても,傾けても「2」と読める。》
     ──この事態をどう表現するか?
    数学は,これらの表現をつくる。
    しかも,「実現に到る操作」の形にしてつくる。

    数学を身につけるとは,数学の表現を身につけるということである。
    そしてこれは,数学の言語を身につけるということである。

    アタリマエであるが,ことばを身につけることをしてこなかった者は,ことばを使えない者である。
    《数学のことばをきちんと使う》は,教員養成系課程の数学教育専攻の学生もできない。
    例えば,最も使えそうな「関数」も,<聞いたことのあることば>以上のものではない。
    推論で常用する数学的な言い回しも,きちんと使えない。
    定義で満足に言えるものは,ない。
    論理記号を使えば,トンチンカンをやってしまう。

    彼らは,数学のことばを身につけることを,してこなかった・していないわけである。
    これは,「表現を一つのプロセスとして完結する」の習慣形成が,数学教育として行われなかったということになる。
    物に反応するみたいなのを,勉強だとされてきたということになる。

    単語を発するで済ませて,文にまで行かない。
     ──だから,文が書けない。
    記号を発するで済ませて,式にまで行かない。
     ──だから,式が書けない。
    文や式の羅列で済ませて,推論までいかない。
     ──だから,推論ができない。

    「算数の授業」は,数学のことばを身につけていない者が担当する。
    この者の授業は,当然のこと,「数学を養う」にはならない。