Up 「生徒一人ひとりを大切に」の意味 作成: 2014-02-09
更新: 2014-02-12


    数学の授業は,授業者の授業力と生徒の「多様性」の相関になる。
    授業者の授業力が高くても,数学に食指が向かない生徒が一定確率で現れる。
    強調するが,数学は上手に教えられればだれでも好きになる,というものではない

    これに対し,算数の授業は,《生徒全員を繋ぎ止める》を命題にする。
    この命題を引き受けた者は,悪戦苦闘する者になる。
    そしてその悪戦苦闘から,倫理および理念を紡ぎ出す。
    それが,「生徒一人ひとりを大切に」である。

    「生徒一人ひとりを大切に」は,「生徒全員を繋ぎ止める」の言い換えである。
    授業成立の条件である「生徒全員を繋ぎ止める」の言い換えである。
    実際,授業が成立しているとき,「生徒一人ひとりを大切に」が実現されているわけである。 「生徒一人ひとりを大切に」が実現されているとき,授業が成立しているわけである。

    中学数学そして高校数学になると,生徒の「多様性」は「授業からのドロップアウト」をはっきりと現してくるものになる。
    このとき,「生徒一人ひとりを大切に」は「生徒全員を繋ぎ止める」とイコールでなくなる。
    即ち,「生徒全員を繋ぎ止めない」が「生徒一人ひとりを大切に」の意味になる。
    そこで,「選択制」というふうになっていくわけである。

    中学数学そして高校数学を展望することは,「算数の授業」の特殊性・特異性を理解するのに役立つ。 ──というより,中学数学そして高校数学と対照することではじめて,「算数の授業」の特殊性・特異性が意識にのぼるところとなる。